ホスピスは、「親切にお客をもてなす所」という意味で、末期の人が人生の最後を充実して過ごせるよう、専門スタッフがさまざまな協力を積極的に行う場です。病院よりややゆったりしたリズムの生活、親密な人間関係を基本に、患者の苦痛に積極的に対処していく特別なケアをする場所といえるでしょう。
病名告知は、あくまでも本人の気持ちを尊重し、家族とも相談しながら慎重に行います。
精神的な援助にも積極的で、時間をかけて病人の話を聞く姿勢を持っています。さらに、家族を支援しようとする姿勢も強く、家族の気持ちを聞いたり、宿泊への配慮などもいきとどいています。
もちろん散歩や外出、また病室での書き物などへの理解もあります。また、ホスピスによってはキリスト教あるいは仏教の宗教的な行事を行っています。
(1)身体的な苦痛のコントロール
(2)精神的な苦痛のコントロール
(3)社会的な苦痛のコントロール
ガン終末状態で苦しんでいる病人を看護している家族は、ホスピスなら苦しみをとってくれるかもしれないと考えます。
一般の病院に入院している場合は症状に応じて医師も看護婦も努力し、最後まで入院を継続する場合がほとんどです。しかし最近は患者がホスピスに移る場合も少なくないようです。
いずれも痛みなどの症状を少しでも取り除いてもらいたい、という場合が圧倒的なようです。
痛みの緩和のために麻薬の処方に消極的な医師の場合にはホスピスに移った方が病人の苦しみを取り除くことが出来ます。
また症状が複雑で、いろいろな薬の組み合わせを必要とする場合にも、ホスピスの方が適切な対処を行なうことが出来るでしょう。
身体の痛みは、ときには精神的な問題が加味されている場合が少なくありません。また死の恐怖で悩んだり苦しんでいる場合もあるでしょう。
その際には、ゆっくりと話を聞いたり、精神面に作用する薬を併用するなど、その人の状態に即した方法を用いる必要があります。
ホスピスの医師や看護婦は、精神的な問題に積極的に対処しようとします。
一般の病院では処置その他の仕事に追われてゆっくり話す時間がない場合が多いのですが、ホスピスでは時間をかけた対話や交流も大切な症状への対処方法と考えています。
ホスピスは建物の構造や設備上の点で、医療以外の生活の幅を広げようとする態勢が考えられていて、終末期の生活をより快適に、充実して送れるよう配慮されています。
たとえば、個室が多く、病室内にトイレがあり自分で歩いてトイレに行きやすい。家族が泊れる部屋がある。病人のために家族が調理できる台所がある。庭や池があり散歩できる。宗教的な支えがあるところもある。したいと思うことが行えるよう職員が援助する姿勢を持っている、などの環境が用意されています。
病名や予後を知っている場合に、病人自身がホスピスに入りたいと考える場合があります。しかし現状では、家族がホスピスに病人を入院させ、苦痛な症状を取り除いてあげたいと思う場合が多いようです。その際、病人を受け入れるうえでどのような手続きが必要なのかは、各ホスピスによって異なりますが、以下のようなことに気をつけます。
(1) | 病院入院中にホスピスに移る手続きを進める場合は、病院の主治医に了解を得る必要があります。もし家族が直接ホスピスの医師に連絡をとっても、ホスピスの対象になる病状の患者かどうか確認するため、現在の主治医の意見書を用意するよう求められるでしょう。また、医師同士の連絡により病状の確認が行われます。 |
(2) | 在宅療養をしている場合には、直接ホスピスを訪れます。病状や各種の問題を把握したうえで、受け入れが検討されます。ホスピスによっては関係者チームが相談して決める方式をとっているところもあります。 もし、医療機関との関係がまったく切れてしまっている場合は、とにかくホスピスに行って相談してみるとよいでしょう。 |
ホスピスの受け入れ条件は、ホスピスにより多少の相違があるので、選択の際にはあらかじめ調査が必要です。ホスピスによっては、受け入れ条件としてガンの発生部位をある程度限定していたり、年齢や、家族が泊まりこみで付き添うことを条件にしているホスピスもあります。
ホスピスが設けられている病院は、一般病院、療養所、老人病院など多様です。現段階ではホスピスのあり方について統一された基準が設けられていないので、ホスピスそれぞれに考え方が多少異なると思います。
しかし、ガン終末期に現れる症状を積極的に抑えることや、精神的な苦しみを支えようとすること、また家族に対しても援助を行うという点では共通しています。