末期の状態にあっても、少しでも快適な生活をおくらせたいと、家族の者も願うものです。
苦痛がある場合、その処置をするのに病院は適切な場ですが、管理上の制約があるため病院は終末期を過ごすのに快適な環境とはいえません。しかし、いつ病気が急変するかわからないし、自宅で世話をする人手がないなどの理由により、末期を病院で過ごす場合が少なくありません。
したがって、入院生活を送りながらも、できるだけ快適さを保つ工夫をしたいものです。
入院中に、より自由な生活を送るという点では、個室の方が対応しやすいでしょう。しかし、経済的には負担がかかり、個室が少ないために入室が困難な場合があります。
公立病院は比較的個室が少なく重症にならなければ個室には入れないかもしれません。
個室が多い病院で経済的な事情が許す場合には、入院の最初から個室を使用してもよいでしょう。そして、例外的な生活を少しでも許可してもらい、生活の幅を広げるようにする方がいいと思います。
末期の病人にとって、食事や検温なども、病院のルール通りにすることがとてもつらい場合があります。たとえば、早朝には食欲がないので、朝食をおそく取りたいということもあるでしょう。
しかし、そのような場合でも、病人は自由がききません。また、看護婦の方でも、病人の気持ちに気がつかないことがあります。
したがって、このような病人の望みを察知したら、家族の方から患者の状態を話し、例外的な対応がしてもらえるかどうか、看護婦に相談してみるようにおすすめします。
病院の制約のために、病人に細かい対応ができないところを、家族ができれば素晴らしいと思います。例えば、
(1)家で使っていた食器を病院に持ってきて食事をする。
(2)ひげ剃りや、髪をとくのを手伝う。
(3)読みたい本や、趣味の道具を届け、気分や体調のいいときに手がけられるようにする。
(4)車椅子で病院内や庭の散歩を手伝う。
(5)食事時間に面会に行き、食事をゆっくり食べさせる。
主治医の許可を得て、週末や家族の都合のいい日にできるだけ外泊するのは、病人はもとより家族にとっても意義のあることです。残り少ない時期に病人と家族の交わりの場を多くし、また気がねなく家庭で過ごす時間をもつことは気分転換になります。
次第に衰弱が進み、自分の身の回りのことが自分でできなくなったとき、家族はできるだけ病人のそばにいる時間を多くすることが望ましいでしょう。
病状が進行した場合には病室に泊まりこむこともあります。あとで家族に心残りがないようにするためにも、末期には病室に泊まる機会をもつのもいいと思います。