もし家族に何かあったら(6)

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第6章 葬儀式

家族がいよいよという事態になっても、なかなか葬儀のことは残された者の同士で相談することは難しいようです。家族にとって、身内の葬儀を相談することは、最後の最後までタブーです。しかし最近では事前に葬儀の準備をする人が出てきたといいますが、それはあくまでも小数です。

身内に死が訪れた場合、ほとんどの家族はすべてを葬儀社などの専門家にまかせてしまうことになります。実際問題、死の衝撃を受けた残された家族は、葬儀社の担当者との打ち合わせに際しても、何を言っているのか理解しないまま、悲しみをこらえている場合が多いのです。しかしそれだからこそ、心によりゆとりのある段階で、葬儀とはどんなことをするのかを知っておくことも無駄ではありません。

書店には葬儀の進行やどんな方法で行なうかについての書物が沢山出ていますので、ここでは葬儀の準備から葬儀後の手続きまでの流れを順を追って書いてみました。

葬儀は地域、病院、宗教宗派、葬儀の規模、葬儀式場によって違いますが、概ね次のように進行します。

全体の流れ

(1)最期を看取る

患者の状態にもしもの場合があると、病院から家族の家に深夜でも電話が入ります。また患者がいつ亡くなるかわからない時期に入ると、家族の誰かがその最期を看取るために付き添うことになります。
そして家族の者は、離れて暮らしている患者の兄弟や子供に最期の別れに間に合うように、危篤であることを連絡します。

死亡日は、病気の種類や患者の年令などによって、医師でも正確には予測できません。そこで遠くから急いで駆けつけた親戚が、死亡に合わせてもう一度出直してくるということも珍しくありません。

(2)死亡から自宅搬送へ

医師から死亡が宣告されると、看護婦は点滴などをはずし、遺体の体をふく作業に入ります。この時、病人の妻が遺体の体ふきに立会い、その他の親族は廊下でそれが終わるまで待ちます。一方、子供は葬儀社に連絡して遺体を自宅まで運ぶように依頼します。葬儀社はどこかが決まっている場合には問題ないのですが、決まっていないときには、病院が紹介してくれます。

葬儀社では24時間係員が待機しており、電話を受けると、病院名、遺体搬送先などを聞き、病院到着時間を伝えます。

一方、遺体の清めがすむと、家族は病室のなかにあった衣類や荷物をまとめ、医師から死亡診断書を受け取ります。また看護婦からは入院費の明細が渡されます。

遺体はストレチャーに移され、白のシーツにくるまれて一階の病院裏口に運ばれます。そしてそこでに待っていた葬儀社が派遣した黒の搬送車(ワゴン)に遺体を運び込みます。搬送車の後部扉が閉ざされると、医師、看護婦たちに見送られて車は自宅に向けて出発します。

(3)自宅での準備

自宅で通夜・葬儀をする場合、遺体を自宅の一室に安置します。居間には新しい布団が敷かれ、そこに遺体が運ばれます。その時、係員は遺体を北枕にして寝かせると、葬儀の準備をするために、別の担当者がまいりますと告げて、引き上げます。

ここで遺族は、葬儀の担当者が到着するまで、家族水いらずでめいめいうろうろとします。時間が夜中の場合には、近い親戚の他はどこにも電話をすることもならず、ただただ故人の枕もとで静かにしていることが多いようです。

やがて葬儀社から係員がやってきて、遺体の枕元に枕飾りをしつらえそして線香とローソクに火をつけて、焼香をします。こうして枕元の飾りが終わりますと、いよいよ葬儀の相談に入ります。

葬儀社との打ち合わせ事項

1.式場の決定

家の間取り、親族・会葬者の人数、交通事情、予算などを考慮して、自宅か葬儀会館か寺院かなどの式場を決定します。  

2.葬儀日時の決定

葬儀は午前中までの死亡の場合、当日の夜に通夜、翌日葬儀という形が多いようです。ご住職の予定、火葬場の予定、家族、親戚の到着時刻などを考慮して決定します。ただし葬儀の日が友引にかかった場合には、火葬場が休業のところが多いため、友引の翌日となります。

3.寺院関係

仏式で葬式を行なう場合には、葬儀の導師は菩提寺の僧侶にお願いします。転居などされて菩提寺が近くにない場合には、故人が属する宗派の寺院を葬儀社に紹介していただきます。この時僧侶の人数も決定します。また戒名(法名)やお布施の金額については、直接ご住職と相談することになります。

4.会葬者人数の予測

通夜や葬儀当日の会葬者の数によって式場や会葬御礼品の数が異なってきます。故人が現職であったかどうか、あるいは受け取った年賀状の数、喪主の会社の地位などが会葬者数の目安となります。

5.葬儀予算

葬儀の値段は不透明でわからないと言われています。ただし葬儀費用は、会葬者から頂く香典額によってまかなうことが出来るといいます。香典はもともと、互助精神から行なわれてきたものですから、それによって葬儀費用がまかなわれて当然といえるでしょう。葬儀の費用の内訳としては会場使用料、祭壇、棺、霊柩車、タクシーなどがあります。ただし、布施・戒名料、香典返しは、葬家で負担しなければならない分といえるのではないでしょうか。

その他、死亡届を役所に届けること(これを済ませると、埋火葬許可証が発行されます。)、祭壇に飾る遺影に使う写真の決定などが最初の打ち合わせで決定される主な事柄です。また会葬御礼や提灯などに家紋を入れる場合がありますので、家紋の種類も確認の必要があります。

6.通夜の準備

自宅で通夜・葬儀を行なう場合には、自宅に祭壇を設置することになりますので、午後からは祭壇の設営のために人が出入りすることになります。

葬家の人が行なう事柄

  1. 通夜、葬儀の時間・場所などの詳細が決まったら、関係者に連絡する。
  2. 同じく、町内の役員や近所に連絡する。
  3. 部屋を片付けて式場・控え室などを作る。
  4. お手伝いの方々に挨拶をする。
  5. 通夜料理の飲食の手伝いをする。

家を式場として使うために、廊下や祭壇の背後に白い布が画鋲で止められていき、そして祭壇が組み立てられていきます。

一方、別室では、遺体を入棺する小儀式にとりかかります。入棺の前には遺体に死装束を着せます。これは家族が分担して行ないます。

そして、玄関には「○○家告別式場」と書かれ、また送り主の名前が書かれた供花が届けられます。

お通夜

日が暮れて来ると、親戚の人々も集まり始めて慌ただしくなってきます。会葬者に配る通夜・会葬御礼品が届けられます。また受付の人には、香典帳、会葬者芳名録、会計帳、供花供物帳などが用意されます。香典帳には、会葬者の氏名、住所、香典金額を記入して、のちの香典返しの時に役立てるものです。

通夜は次のように進行します。

  1. 弔問客の受付を行う。
  2. 喪主、遺族、参列者着席し、僧侶が読経、焼香を行う。
  3. 参列者による焼香を行う。
  4. 喪主の挨拶。
  5. 酒食のもてなしを行う場合もあります。
  6. 近親者で通夜のお守りをする場合もあります。

通夜の読経が終り、受付の人は通夜分での香典額を集計して、喪主に報告。10時過ぎになりますと、お手伝いの方や親族も、近くにすむ者はそれぞれ家に帰ったりしますが、遠くから来た親戚の者などは適時用意されたフトンで休まれたり、徹夜を覚悟されて遺体を見守ることもあります。そして祭壇の前では何年かぶりに揃った家族が、それぞれ故人についての思い出話を語ったりします。このように親戚の方々が、それぞれローソクの火を守りながら朝まで起きているようです。

葬儀・告別式

葬儀の朝、喪主は食事をすませたあと再び喪服に着替えます。受付の人たちが集まり、午前11時からの葬儀に備えます。葬儀社の係員が弔電の束を持参して、奉読の順番を決定します。その日の予定は葬儀・告別式、会葬者への挨拶、火葬場での火葬、そして遺骨とともに家に戻ってから初七日法要、そして会食という順番です。個条書きにすると次のようになります。

  1. 会葬者の受付を行う。
  2. 喪主、遺族、参列者式場に着席する。
  3. 僧侶入場、読経開始。
  4. 弔辞、弔電の奉読。
  5. 喪主、遺族、来賓の順で焼香を行う。
  6. 一般会葬者が焼香を行う。
  7. 式終了後、親族は故人との最後のお別れをし、棺に釘を打つ。
  8. 出棺に先立ち、喪主又は親戚代表は会葬者に挨拶を述べる。
  9. 親族は車で火葬場へ向う。

葬儀後の諸手続き

「4月28日。父が亡くなったことから、年金の支給手続きの変更をしなければならず、母は何かの証書の置き場所が分からない、と探し続けている。それから、成人病センターと国立病院に治療費の問い合わせ、と次々と現実的な問題が並んでいる。

4月29日。初七日である。朝から母は台所で立ち騒いでいる。仏壇に供える膳を準備しなければならない。そのための椀種や吸物を作るために右往左往しているのだ。年をとると要領が悪くなるものらしい。元来、母は料理にはそれほど興味のあるほうではなかったから、わずかな品数であっても大変な仕事になる。私が手伝うと、母はおろおろとそれを横で見ながら、あまり役にも立ちそうにない指図をしている。あっという間に小さな膳が出来上がった。」

(亀山美知子 『死にゆく人々に教えられて』 226頁)

これは、ある葬儀後に行なう手続きや法事の準備の体験場面です。確かに葬儀が終わってやれやれと思う間もなく、つぎつぎに用事が待っています。それらは大まかに言いますと、次のようなことが挙げられます。

1.香典の整理

香典返しのある地域では、まず香典額とその人の住所、氏名、金額を整理しなければなりません。またお返しする時期や品物の決定という大事な作業があります。また香典の他に、花輪を頂いた人、お供えの果物を頂いた人、弔電を頂いた人にはどのようにお礼をしたらよいか。また生前病気見舞を頂いたままになっている人にはどうしたらよいかなどの問題があります。

2.病院のお礼

病院の支払をかねて、看護婦や医師にお礼に窺うことがあります。

3.銀行の預金下ろし

葬儀には何かとものいりなものですが、銀行、郵便局から故人名義の預金を引き出したり解約したり出来ないことになっています。それは正当な相続者が誰であるかが確定した証拠として、相続人全員の印を押した遺産分割協議の書類がなければ、正当な相続人と見做されないからです。

4.遺産の相続と相続税の払込み

5.遺品の整理と形見分け

6.生命保険、国民健康保険、厚生年金などの手続き

7.高額医療費(高額療養費)の払戻し

8.忌明け法要の準備

 

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