もし家族に何かあったら(5)

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第5章 対外関係と手続き

親戚や知人にどう知らせるか

がんでない軽い病気の場合でも、親戚などに病気を通知することをためらわれる事があります。それは病気であることを知らせることによって、それを聞いた者がお見舞に来なくてはならない立場に立つことになるからです。また、通知をしないままにしておくと、あとで「どうして知らせてくれなかった」と叱られることもあります。しかし実際に困るのは、ガンなどの場合に、本当の病名を知らせるかどうかでしょう。

見舞者の心理

見舞に行くことも、家族にとっては一回一回複雑な心理状態ではないでしょうか。

病院に近づくにつれて、私の心は重くなった。父がどうなっているのか、昨夜来、父を襲った異変の結果をやがてまざまざとつきつけられるのがこわいのだ。無闇におじけづいて、不吉な連想につながるものを閉め出すために心をすっかり閉ざそうとしていた。お見舞に何を持って行くべきか、お義父さんのためじゃなく、多分朝から何も食べていないにちがいないお義母さんに何を買って行くのがよいだろうかと私に相談をしかける優子はいうにおよばず、私たちに連れだって歩く歩が私に話しかけるのさえも私には苦痛だった。(中略)病室番号を一つ一つ確かめて歩いた。病院内では4が欠番になっている意味に初めて気づいた。これまでつまらない御幣かつぎだと決めつけていたことに今は救われていた。

(つる井通真 『父、卒わる』 講談社 24頁)

見舞い客への対応

また、病人に付き添っている方は、見舞に来られた人々にどう対応するかを知っておくことも大切なことでしょう。次はそうした例です。

私は、がんで入院の友人を見舞ったことがある。介護のご家族から、「ご面会は15分間までに」と、頼まれた。若い女性の方だったが、付き添いはかくあるべしと感服したことがある。

(黒宮正栄「紙切り息子の介護日記」中日新聞社 43頁)

永田勝太郎さんは医師の立場から、見舞い客にどう対応するかを書いています。

「どの人を見舞い客として招じ入れるかは、家族がよく判断する必要があるでしょう。患者さんと見舞い客との人間関係、そして今後の関係の展開についてよく考え、いつ、どんな形で見舞いにきてもらうかを十分考えてください。

また、見舞い品については、感染対策上、虫や細菌のつきやすいものは、できるだけ部屋に入れることを避けてください。たとえば、土の入った植木鉢は、絶対避けるべきです。ガンの患者さんは、体力が落ち、抵抗力が下がっています。感染症には弱いので、十分に注意してください。また、なま物(刺し身など)の差し入れも、ふつうは控えたほうが無難です。食べ物については、主治医とよく相談してください。何を食べてもよいとはいうものの、病気によっては、食べることを控えるべきものもありますので。

切り花(元気なもの)、特に白い山ゆりや真紅のばら、黄色いフリージアなどは、患者さんを元気づけ、希望を与えてくれます。また、部屋を明るくしてくれます。黄色は希望を与えてくれる色です。緑の葉は、心をなごませてくれます。」

(永田勝太郎「家族がガンといわれたとき」主婦の友社 204頁)

お見舞の心得

今度はお見舞する人はどんなことを知っておいたらよいでしょうか。これはお見舞をする家族も知っていたほうがよい事柄です。東あき雄さんの『手術のことがよくわかる本』には、5つの注意項目が述べられています。

◎できるだけ、少人数で面会をしたほうが患者も落ち着きます。

入院している患者は気持ちがふさぎがちです。家族の人がいつも自分のことを気にかけているというが大きな励みになります。完全看護の病院であっても、できる範囲で構いませんから、こまめな面会をしてあげてください。遠くに住んでいる場合は仕方ないのですが、もし通勤経路や勤務先の近くに病院があったら、朝や夕方の5分、10分でも顔を見せてあげたほうが効果的です。

顔を見せ、様子を見て、身の回りの世話をすることが一番です。何か特別な行事をするときのように、家族総出でやってくる人もいます。できるだけ、少人数で面会をしたほうが患者も落ち着きます。周りの人に迷惑もかかりません。大人数で押しかけることはできるだけ避けてください。

(同書243頁)

◎小さい子供を連れての面会は、できるだけ控えます。

小さい子供、特に赤ちゃんを連れての面会は、できるだけ控えます。赤ちゃんなどは病気が感染しやすいというのが一番の理由です。また、慣れない雰囲気で泣き出したり騒いでしまっては、同室の患者に迷惑がかかります。小さな子供の面会は病院の規則で禁止しているところもあります。小学1年生の子供をもつある母親が入院したときのことです。入院直後は具合が悪く、また、手術前は緊張していたので、父親は子供をあまり病院に連れてこないようにしていました。小さい子供をもつ母親が入院した場合、入院中の家族に対する心配もひとしおです。状況にもよりますが、患者の側にゆとりがないときは、子供を面会にあまり連れてこないほうが賢明です。

(同書244頁)

◎おしゃれは控えめに

ときに、めいっぱいおしやれをして面会にやってくる家族の方がいます。病院は、あくまで病気を治すところです。場所柄をわきまえない派手な服装や香水は、闘病中の回りの患者に不快感を与えることもありますから、なるべく控えます。

病気で入院しているとにおいに対して敏感になり、普段は気にならないことでも不快になることがよくあります。香水だけでなく、お見舞いの花のにおいも、できるだけ穏やかなにおいのものを選びます。

(同245頁)

◎面会時間を守ります

お見舞いにみえる人には、面会時間は病院の規則に従ってもらってください。

病院の1日は、規則的です。病院によって、午後3時から5時とか、午後7時から8時半というように面会時間が決めてあります。面会時間以外にお見舞いの人が来てしまったときは、なるべく家族が病室の外で対応してください。

(同248頁)

お見舞いに来た人が、回診の医者や看護婦さんにあいさつをしたり、患者の状況などをひとこと聞くことは遠慮しないでください。ただし、治療法その他についての相談は、誰かが代表者となってください。きっちりとした説明を受けたいときや相談があるときには、廊下での立ち話ではなく、事前にアポイントを入れて医者の空いた時間を利用すると、落ち着いて話ができます。

(同250頁)

お見舞の心構え

次にノーマ・アプソンの『愛するものが死にゆくとき』(サイモン・アンド・シャスター社)の14章「お見舞を容易にする」にあるお見舞の心構えについみてみましょう。これはアメリカ人がお見舞するときの在り方ですが、大変参考になる意見がのべられています。

  1. 多くの人々は、友達と一緒に病人を見舞うという誤りを犯します。これは訪問者を勇気づけるかもしれませんが、しかし、それは個人的な訪問とは違います。多ぜいの訪問はお見舞を台なしにすることがあります。特に薬物治療や、痛みを感じている場合、またある人と話をしたい病人にとって、大勢での訪問は喜びよりむしろ試練となります。

  2. あなたの注意を患者に向けて、そして会話をリードするようにしなさい。2人が共有の話をするには大変に短い時間しかありません。しかし、もし患者がテレビを見ている最中か、話すに気が進まないようであれば、状況を見て時間を割り当てます。ときには言葉を使わないコミュニケーションでも、話しと同じくらい満足を与えることができます。決定的なことは、あなたがそこにいることです。あなたは何を末期患者に与えることができるかです?

次にどんなお見舞の品が、患者に人気があったかが紹介されています。

  1. 化粧品:軽い、良い香りのパウダー、オーデコロン、ボディローション、髭剃りローション、石鹸など。
  2. カセット・テープ:大好きな音楽(詩歌、聖書の朗読)など。
  3. ソフトなカーディガンか病人用上衣、長袖で腕と肘をシーツから守る(ときどき敷布が発疹を引き起こす)。
  4. カラフルなアフガンか軽量のひざ掛け。
  5. ノート面、ペンなどの文房具。
  6. 壁に張る名所かペットの写真のポスター。
  7. 使い捨ての箱に入れた自家製のスープかクッキーか軽食。
  8. 特別のティーバッグか即席スープかコーヒーの包み。
  9. ワインかブランデー(もし医師に許されれば。)
  10. 大型の雑誌か新聞。
  11. 見本サイズの口内洗浄剤、シャンプー、ローションなど。
  12. あなたが再び面会する日まで、それぞれの日別の小さい包みの贈り物。

何を話題にしたらよいか?

同じく『愛するものが死にゆくとき』に、末期患者に何を話題にしたらよいかが述べられています。もちろんそれは、相手の健康状態、性格、あなたの関係によりますが、次のルールが示されていました。

  1. 適切ならば思い出話をして楽しみます。あなたと患者が共有した良い思い出を話し、気分を新たにしなさい。死について話し合うことで、最愛の人の隠された感情を表面に出すことを怖れてはなりません。

  2. 患者を泣くようにしなさい。別れることの悲しみを共有する恐怖は、両方ともが感じている最も深い恐怖でしょう。恐怖と悲しみの感じを表すことは、末期の病気の段階にある人にとって自然な感情である。もし患者が涙をみせ、悲しみを表すならば、それを共有しなさい。

  3. 患者に繰り返しが多くても、話させるようにしなさい。静かなままで、自分を表すようにしてあげなさい。同情的な聞き手は、上手な話し手より遥かに重要である。

  4. 安心させるために議論をしたり、或いはあなたがどう感じるかを説明してはいけません。どんなことがあったにしろ、その人はかけがえのない、特別の人で価値ある人であることを考え、それを知らせるようにしなさい。もしそれが自然で心を分かち合い悲しいならば泣きなさい。

  5. 大変に気を使うことは、病人に何を語ったらいいかということでしょう。しかし見舞では最後に、「元気だしてね」と言うような励ましの言葉をかけて別れることが多いものですが、それに対して警告しています。死にかけている人に「元気を出すように」或いは「勇敢でありなさい」と言ってはなりません。手に触れ、或いは抱擁することは重要です。接触や愛情を恐れていてはなりません。それは今、薬より必要です。

  6. あなたが何を行なうことができるかを尋ねて、それを行ないなさい。あなたの約束を守りなさい。もしその人が話ができないならば、静かにしています。そこにいるだけでいいのです。患者の回りの人と会話してはいけません。この訪問の焦点は患者です。他の人と話すときは患者から離れて話しなさい。

  7. 患者は話す状態にあるかどうか知りなさい。「それについて話してほしいと思う」ことだけを尋ねなさい。情報に答えたり、買い物やお使い、あるいは友達を呼ぶなどの申し出をします。

  8. 患者が怒り、憂鬱、興奮状態になる場面を覚悟していなさい。いやみを個人的にとってはいけません。あなたが近くにいて、恐怖や怒り否定や抑圧のリスクを共有できることをほのめかしなさい。患者にとって大事なニュースだけを話し合いなさい。講義や説教もいけません。

見舞い客への助言

ヴァン・デン・ベルグの『病床の心理学』(株式会社現代社)にも第2章に「見舞客への助言」が述べられています。これも50〜69頁までにわたって述べられています。

  1. ふつうにふるまうこと
     悲しげな表情やゆきすぎた温かさをこめた対応は、患者は喜ばないといっています。
  2. 自分の時間をかけること
  3. 椅子にすわること
     たとえ5分しかいられないとしても、椅子に座るべきであるといっています。
  4. 患者が病気であることを忘れないこと
     患者が見舞客の前だから苦痛を抑えていく場合があるといっています。
  5. 患者の病気を当然のことと性急に考えすぎないこと
     患者はもう健康な生活の中にはいないのだからと感じながら話す、といったやり方にならないように努力しなければならない。
  6. 病気のからだに決して嫌悪感を示さないこと
  7. 見舞客は患者の病状の重さに関する話を避けてはならないこと
  8. 患者の目の前で他人と患者の話をしないこと

以上の8点です。

諸費用

病人を抱えた家族が感じるストレスのなかには、病気にともなう出費があります。それは病院などの施設や自宅介護の場合でも同じです。いずれにしても、それにかかる治療費、入院費用、雑費などはあらかじめ、心づもりをしておくことが大切でしょう。

入院費用

入院費用は、入院する前から病院に問い合わせて確認することが出来ます。次は永井明『病気の値段』のなかの意見です。

「大学病院のような設備の整った大きな病院に入院した場合は、1日につき15,080円、診療所では6,970円。たとえは適当かどうかわからないが、シティホテルに泊まるか、ビジネスホテルかの違いぐらいはある。

この医学管理料、入院が長くなればなるほど安くなっていく。たとえば、入院日から2週間以内は所定の545点だが、1カ月経つと250点、3カ月を超えると155点……。

そして、入院が1年半にも及ぶと、98点といった具合である。看護料の加算も、これほど極端ではないが漸減する。
(中略)

厚生省は、個室と2人部屋は一応「特別な」病室として、差額ベッド料もやむなし。しかし、それ以外の大部屋は基準「室料」(入院環境料)だけと指導している(それさえ、なにやらあやしい雰囲気で、なし崩し的に大部屋差額も合法化されそうな雲行きだ)。

だが実際には、室料151点だけですませている病院は、むしろ少数だろう。その料金は病院によって、それこそ千差万別だが、6人部屋で3千円、4人部屋で5千円の差額をとっている大学病院もあるらしい。4人部屋に4週間入院すると、差額ヘッド料だけで14万円になる。もちろん健康保険は適用されない。10割自己負担である。

みなさんお金持ちになったせいか、不満の声はあまり表面に出てこない。もちろん、それで納得しているのならけっこうだ。だが、最近では健康保険適用以外のもの、たとえば「入院介護のお世話料」などというわけのわからない名目で、患者さんに月6、7万を請求する病院もあると聞く。」

(永井明『病気の値段』 44頁、光文社)

馬鹿にならないお金

次は意外に医療費はかからなかったという例です。しかし、医療費以外にも、安心料として民間療法などに出費されることもあるので、計算に入れておいた方がよい場合もあります。

「ガンはお金がかかるときいていた。多少の貯えもアッという間に消えてしまうように思っていたが、実際はさほどでもなかった。医療費は1カ月3万円以上かからなかった。

少し細かく説明すると次のようになる。
保険の種類は国民健康保険、3割が自己負担だ。大部屋に入院して治療を受けて約25万円。請求されるのはその3割の7万5千円。しかし、「高額医療制度」のおかげで、1カ月1病院に入院して3万円を超える部分は、国庫が負担してくれることになっている。だから、地方公共団体に申請すると、その差額、例えば4万5千円は返還される。

しかし夫の場合がその3万円だけで済んだのには、いくつかの幸運があった。まず、部屋も薬も保険がきくものだったこと。次に、病状が悪化でなく良化したこと。悪化すれば、個人部屋に移り、看護の人をやとわなくてはならない、特別な薬を投与されるかもしれない。これはみな保険がきかない。保険がきかないものに対しては高額医療制度も適用されない。即座に数十万円はオーバーする。ただ、医療費は3万で済んだが、それ以外のところで馬鹿にならないお金が出るのが、ガンという病気なのだろう。医学でも治らないという頭があるので、よいキノコがあるといわれればお金の問題ではないと糸目をつけず買い、よい治療器があるといえば十万単位のお金も出してしまう。ガンという病気の魔性かもしれない。」

(児玉隆也『ガン病棟の九十九日』127頁、新潮社文庫)

次はガンの入院費用と医療費です。資料はガン封じ寺和尚のガン体験記です。

お金の話が出たついでに、ガンで入院すれば、いったい費用はいくらぐらいかかるか、参考まで〈9月1日〜10日〉分の請求書をご紹介しておこう。もちろん当人負担実費である(国保。明細書はコンピュータで打ち出されるためか、カタカナになっている)。

トクテイリョウヨウヒ
トウヤク 32,787
ショチ、シュジュツ 6,129
ケンサ 4,887
レントゲン 4,578
二ュウイン 26,868
《ショウケイ》 75,312
   
トクテイリョウヨウガイヒ
ヘヤサガク 20,000
TV、レイゾウコシヨウリョウ 4,500
《ショウケイ》 14,500

総計で18万9212円が10日分の入院費となる。差額ベッド代の11万円を別としても、月額で25万円はかかることになる。

(高田真快 『ガン封じ寺和尚の「死ぬに死ねない」ガン闘病記』 100頁、ごま書房)

病気の値段

病気の値段とは、治療にかかる治療費と入院費をさします。永井明さんの『病気の値段』では、あらゆる病気の値段が網羅されておりますが、ここでは肺がんと心筋梗塞の緊急処置費用を取り上げました。

肺がん費用

ここでは、肺ガン治療にかかる費用として、ある病院の外科に入院して手術した患者さん(75歳男性で病期・A、化学療法併用)の、術後1カ月分(診療実日数28日)の診療報酬明細書の内訳を示しておこう。

「この180万円というのがスタンダードになるかとかは判断のむずかしいところだが、だいたいの目安にはなるだろう。またこのほかに保険適用外のもの、たとえば差額ベッド料などが必要になる。この患者さんは老人医療の適用になり、自己負担分は1日当たり700円で1カ月1万9,600円だった。」

(永井明『病気の値段』 52頁、光文社)

心筋梗塞の緊急処置費用

Aさんに対する緊急処置にかかった費用(5日間の入院費も含む)。150万円余り、けっこう立派な額である。しかもAさんの加入しているのは国民健康保険で、とりあえず2割の50万円を自己負担分として支払わなくてはならない(のちほど還付されるが)。べつに、この処置をしたお医者さんが、収益を上げるために、余計なことまでしているというふうはない。教科書どおりに治療してこういう金額になるのである。

「この表を見てすぐにわかるのは、手術料が治療費のうち9割近くを占めているということだ。ここでいう手術というのはPTCA。その細かい内訳は表のとおりである。

手術料として請求しているもののうち、3分の2が手術材料費−つまり、カテーテルやその中を通すワイヤといった使い捨ての医療器材なのである。ぼくたちがふつう手術料としてイメージする「テクニック」料は24万8,400円。これはもちろん、お医者さんひとりだけではなく、看護婦さん、放射線技師の人たちの人件費も含めた値段である。「わが国の医療費システムでは、技術料が不当に低い評価しかされない」」

(『病気の値段』 58頁)

高額医療費にどう対処するか?

医療保険

痴呆、寝たきりになれば長期入院や介護費用が、ガンなどの病気になれば高度先端医療による高額の医療費が必要となりますが、公的な健康保険だけで足りるでしょうか。

たとえば差額ベッド代や付き添い看護は、健康保険からは支払われません。仮に3千円の差額ベットに1カ月入院するとその負担は9万円となります。家政婦等の雇用費用は1日約9千円。1カ月で27万円。高額療養費適用後の入院患者負担7万2300円と合わせると43万2300円となります。ガンなどで高度先端医療による治療が必要となった場合には、健康保険扱いであっても数十〜百万円もかかる場合があります。

 また、老人専門の病院などでは、おむつ代などの名目で1カ月当たり数万円を保険外負担として請求するところが多いようです。老人保健法では入院中の食事にかかる費用のうち患者負担を780円(所得等により異なる)と定めていますが、実際にはそれ以外に実費負担を余儀なくされているのが現実です。

そこで、公的な保険でまかなわれない部分の医療費をカバーするのが、民間の医療保険です。目的によってさまざまな種類があり、生命保険会社が扱うものと損害保険会社が売り出しているものとがあります。

医療・介護保険の種類

医療保険には、死亡保険金を生前に前払いされる「生前給付保険」、病気・ケガ全般による入院や手術費用などに重点をおいた「高額医療保険」、痴呆や寝たきりになったときの介護費用の保障に重点をおいた「介護保険」、特定の病気に重点をおいたもの「ガン保険」などがあります。

さらに、これらの保険には一般のタイプに医療保障を特約としてつけたセット商品と、ガンならガンだけを扱う単一商品とがあり、掛け金や保障額もそれぞれ異なっています。また、払込みのタイプにもさまざまなものがあります。

●生前給付保険

本来死亡時に支払われる定期保険や終身保険などの普通死亡保険金を、生前時に前払いする仕組みの保険が生前給付保険です。この死亡保険金を生前給付することで、

  1. 重い医療費を軽減する
  2. 重い傷病の場合であっても高度先進医療費や介護費、住宅改造費などがまかなえる

というメリットがあります。ガンなどの場合の本人に告知出来ないことを配慮して、本人に代わって配偶者や親族が前払いで請求できる指定代理人制度が導入されています。

●特定疾病型の生前給付保険

特定疾病型の生前給付保険は、「ガン」「急性心筋梗塞」「脳卒中」という特定の病気に対してのみ生前給付されます。

現在、多くの生保会社で「特定疾病保障保険」あるいは「3大疾病保障保険」を扱っています。基本的には死亡保険である定期保険や終身保険に「生前給付機能」を組み込んだもので、被保険者が死亡した場合は死亡保険金が支払われ、「ガン」「急性心筋梗塞」「脳卒中」の3大成人病など、所定の給付事由に該当したときには死亡保険金と同額の特定疾病保険金が一括払いで生前給付されます。

●医療保障保険

医療保険は疾病・災害による入院、手術、死亡に対する給付のほか、希望により看護や介護通院、長期入院、ガンをはじめ特定の病気や家族に対する保障などが特約の形で付けられます。具体的には
  1. 本人が病気で8日以上入院したときに支払われる疾病入院給付金
  2. 不慮の事故で180日以内に5日以上入院したときの災害入院給付金
  3. 高度障害状態になったときの高度障害保険金
  4. 被保険者が死亡したときの死亡保険金があります。

例えば入院給付金日額5,000円の場合、死亡保険金はその100倍の50万円というのが普通で、ほとんどの会社で日額1万円まで取り扱っています。手術給付金は病気の種類によって異なり、ガンの手術の場合、入院日額の40倍というのが標準です。これに各種特約を組み合わせて保障を厚くすることができます。医療保険では5年満期、10年満期などの年満期タイプと、一定の年齢で契約が終了する歳満了タイプ、そして終身型の保険がある。

 

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