葬儀後の手続きで困ったこと

[東京都 主婦 53歳]

イラスト  昭和52年春、家族の祈りも空しく母は帰らぬ人となりました。最愛の妻を失った父の悲しみは、言葉で表すことは出来ない程でした。
 当時70歳の父は、妻の看病のために永年のサラリーマン生活に別れを告げ、母が永眠する日まで病院から一日も離れる事なく妻をみとりました。
 父が独身の息子と女っ気のない家庭で、それでも何とか立直って正常な生活を送れる様になる迄には、3年程の歳月が必要でした。
 ある日突然、社会保険庁から一通の通知状が届き、父はあっとおどろきました。何と母が亡くなってからの3年間、父は年金を母の分まで受け取っていたのでした。母の死亡時、市役所の届けは葬儀社の方がすべて代行してくださりほっとしていた父でしたが、年金を扱っている社会保険庁(社会保険事務所)への届けの方は、忘れていたというより気が付きもしなかったのです。仕事以外の事すべてを母にまかせていた父も、その息子も、届け出についてうっかりしていたのです。
 お陰で次の一年間、父の年金は母の3年分の年金を差引かれ、ほとんど年金の支給されない苦しい一年となりました。悲しみの最中、年老いた方々が社会保険庁への届け出を忘れてしまわない様に、家族、親類知人等が注意してあげてほしいと思います。夫婦のどちらかが不幸にして他界された時には、必ず区役所への死亡届と同時に、社会保険庁にも出むいて年金関係の届けをすませることは、残された方の経済生活上大切な事です。高齢化社会を迎える今、年金についての関心と同時に届け出の義務について日頃頭に入れておかなければと痛感しました。平成元年3月、母の十三回忌直前に父は83歳の生涯を閉じました。「幸福であった。よき妻と善良な子供達に恵まれ、ありがとう」と書き残してくれました。これも安定した年金生活で精神的にゆとりのある老後を送る事が出事たからだと感謝しております。


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