喪主挨拶はお礼の気持ちで

[男性 27歳]

イラスト  私の祖父が亡くなったのが4年前。死因は肺炎で、享年87才という、まさしく天寿を全うしたという言葉がふさわしい最期でした。
 葬式の当日、喪主である叔父が祖父の生前を語るべく、挨拶を始めました。私は大変可愛がってくれた祖父との別れは非常に悲しく、黙って俯いたままでした。祖父とのたくさんの思い出が走馬灯のように駆け巡ります。
 ふっと顔を上げたその時、私は思わず現実に引き戻されそうになりました。叔父の挨拶は祖父の生前を生き生きと蘇らせてくれる程、立派な内容だったのですが、その態度は、腕を後ろに組み、胸をはって堂々と、まるで選挙演説のようでした。叔父も喪主は初めての経験で、故人を偲ぶということよりも、つつがなく葬式を終えること、そればかりが頭にあり、また挨拶の内容を原稿通りに進めようとするプレッシャーからか、態度に頭までまわらなかったのでしょう。
 叔父も後で悔いておりました。喪主として葬式をつつがなく終えること、もちろんその願いも大切ですが、喪主の挨拶は葬式の最後を飾るフィナーレなので、やはり手は前で組み、腰を少し屈めて、悲しさを前面に出す、といった態度は大切だと思います。
 せっかく故人を偲んで焼香に来てくださる方々にも決してよい印象を与えないだろうと思います。


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