死後は献体で

[大阪府 男性 鍼灸師 61歳]

イラスト  自分の死後はこの体を献体しようと考えたのは、昭和42年に入学したばかりの鍼灸専門学校(夜間)の実習の一つの人体解剖実習の体験をした時からである。なんと今の世にこのような尊い奉仕があったのかと深い感銘を受けたのである。解剖実習の前に献体に合掌し、あリがとうございますと感謝の心で真剣に実習にとり組んだことを今でも鮮明に思い出す。「献体は師である」と思うと自分も将来、東洋医学で人々のために奉仕しようと祈り心に誓って現在にいたっているが、その折りの年令は40そこそこであった。
 父は鍼灸師として活躍している時、死後、医学のため献体したいと賛同を求められ、「あれ、オヤジが先に献体するのか」と尊敬の念を持った。父の献体に続いて母も死後、献体を父と同じ大学にさせて頂いた。この体験から私も妻や子供に賛同を求めたところ、妻がなかなか「うん」と言わず、了解を得るのに2年かかった。子供達は自分の祖父や祖母が献体したことを知っているので私の願いには心よく賛同してくれた。さっそく手続をとったが、献体しようと考えてやっと15年目にして実現し、心が晴ればれした。
 献体登録をすると、逆に自分の体をさらに大切にしようという気持がおこるのが不思議であり、このあと何年生かして頂けるか判らないが、生きている限り、15年以上続けている早朝ランニングを続け健康を維持し、病気のない体で献体出来れば最高と思っている。
 献体登録したからといって葬儀は遺族等の考えで世間一般並に実施出来るのであるが、私は家族に葬儀は不要であると日頃言っているし、遺言状に明記してある。私の死後はすぐ献体登録してある大学に遣体を引き取って貰うよう固く指示してあり、私自身も何時、何処で生命をなくしても困らないよう名刺ケース内に大学の連絡番号のメモを入れてある。これで一安心である。


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