2000.08
フューネラルビジネスフェア2000

2000年6月28、29日の両日、東京流通センターにおいて、綜合ユニコム主催による第4回目の「フューネラルビジネスフェア2000」が開催された。

「葬儀が変わる葬祭サービス21世紀ニュービジョンを求めて」と題されたフェアでは、最新葬祭関連用品・サービスシステムの展示、特設ステージでの実演や講演イベントのほか、「フューネラルビジネスシンポジウム2000」が同時開催された。来場者数は2日間合計で約3800人。

このフェア展示会場には70企業が出展したが、そこからどのようなことが読み取れるだろうか。

出展企業分類

出展企業70社を「フューネラルビジネスフェア2000」の出展内容の記載に準じて分類を行った。

葬具(祭壇、棺、生花関連) 7社
インテリア・家具(斎場用) 1社
企画・コンサルティング 4社
遺影写真送信システム 1社
霊柩車 1社
筆耕ソフト・システム、プリンタシステム 6社
葬祭支援コンピューターシステム・OA関連機器 14社
返礼品・ギフト・香典返し 10社
設備・演出機器、セキュリティシステム 10社
その他 16社

出展社数の違いはあるが、「葬祭支援コンピューターシステム・OA関連機器」の出展が前年より8社増加している。また、「その他」の項目も増加しており、商品の多様化がうかがえる。

展示内容の5つの特徴

次に展示内容を大きく分けると、その特徴を5つに分けることができる。

1.葬祭業のIT革命 
2.祭壇と装飾品
3.環境保護商品 
4.映像とメモリアル商品
5.棺と副葬品

以上の5点は現在の葬儀、消費者のニーズ、葬儀の将来を予測する要素である。では、この5点についてそれぞれにみていくことにする。

1.葬祭業のIT革命

ITとはInfomation Tecnology=情報技術と訳される。ITとはコンピュータを核とする電子的情報技術のことで、それによって情報の保管・処理・伝達に関わる能力を飛躍的に高めた。

ITビジネスはインターネットを利用した商取引などがその主な例で、葬祭業界にもその流れが押し寄せてきている。それを示すのが「葬祭支援コンピューターシステム・OA関連機器」項目の出展増加である。このジャンルの商品には、受付代行システム、香典帳作成システム、名簿管理、葬祭業務管理、インターネットサービス、プレゼンテーション、礼状作成がある。特に注目したいのはITビジネスに関するもので、4社が出展したインターネットサービスである。

郵政省の「平成12年版 通信白書」によると、日本の15歳から69歳までのインターネットのユーザー数は、99年末で2,706万人と推計される。98年末は1,694万人だったため、1年間で1,000万人が増えた計算になる。2005年にはユーザー数約3倍の7,670万人に達するという。インターネットが普及するならば、葬祭業界もそれに対応しようという動きがあるのは当然といえよう。

では、実際にインターネットでどのようなサービス提供を行えるのか。出展されたインターネットサービスでは、次のような内容を提供している。

訃報情報(日時・式場までの交通手段・地図、故人経歴などの情報を発信)
故人の交友関係を把握していなくても、広範囲に葬儀案内ができる。会葬者は、正確な情報を知ることができ、葬儀場所までの地図が事前に確認することで参列しやすくなる。

・供花供物の注文サービス
画像により現物のイメージがつかめるため、意向に沿った商品を注文できる。

・香典送付サービス
葬儀に参列できない場合でも香典を届けられる。現金書留で送付する手間も省ける。

・ホームページの芳名録への記帳
葬儀に参列できない場合でも、自分の言葉でメッセージを送ることができる。

これらのサービスでは、遺族よりも会葬者のメリットが大きいようである。こうしたサービスは、実際にはまだ準備段階というところも多く、実施・普及にはまだ時間を要すると思われる。以上のようなサービスが、葬儀という緊急の事態に有効にはたらくかどうか、今後の動きに注目したい。

・葬儀社のホームページ

葬儀社で独自にホームページをつくり、自社の紹介をしただけではなかなか見てもらえない。常に更新し、消費者が知りたい情報を発信することが基本である。そこで葬儀のポータルサイトに参加することが考えられる。ポータルサイトはそのジャンルの多くの情報が集められているため、消費者への情報公開、情報発信においては有効な手段といえるだろう。問題点として、インターネットはどこにいても利用できるが、葬儀社は地域密着型のところが多いということである。

インターネット関連以外では、情報の保管・処理・伝達に関わる機器がある。 受付代行システムは、葬儀の受付を電子化したもの。電子ペンで電話番号を記入するだけで、住所まで表示される。香典帳作成システムは、香典袋を元に香典帳を作成するシステム。弔電や供花供物のデータとともに管理すれば、礼状を送ったり香典返しをする際に宛名ラベルを打ち出すことができる。名簿管理や葬祭業務管理では、葬儀の見積、請求、領収といった伝票管理、顧客管理ができる。

2.祭壇と装飾品

生花祭壇

フェアでは、白木祭壇よりも生花祭壇の方が目についた。葬儀において生花を使用する理由として、最近では故人の個性を尊重し、故人の好んだ花や故人にちなんだ花を捧げる傾向にある。この他、白木祭壇にはない曲線的なデザインができたり、花の色で演出できるといった利点が考えられる。また、宗教や宗派によって使用する花に特に決まりはないため、花祭壇であっても葬具を加えれば仏式の祭壇として使うことができるのも普及の可能性として考えられる。

ただ、花祭壇は白木祭壇にくらべて装飾技術が必要であったり、生花の仕入れ管理をどうするかという問題点があり、葬祭業者は生花業者に頼らざるをえない。フェアにおいても花の保存庫や、インターネットによる生花取引といった生花業者向け商品紹介もあり、葬祭業界において生花業者の重要性が増しているとみることができる。

また、生花祭壇の演出手法の紹介も行われた。生花祭壇というと、社葬や団体葬といった大型の葬儀に使用されることがほとんどである。会場の広さに合わせて生花の使用数も多くなり、高額にならざるを得ない。そこで白菊スロープを基本とし、予算に合わせてそこにアレンジやデザインを加えるという提案手法をとるそうである。

生花祭壇を大型葬儀だけでなく、個人葬にも定着させようという試みも行われている。前述のように白菊のスロープを基本とし、そこに色花を用いる方法が紹介された。また、安価に提供するために、白木祭壇と生花を併用する方法が紹介された。仮に生花祭壇が普及したとしても、白木祭壇がなくなるとは考えがたい。今後の白木祭壇は、このように生花と組み合せて使用されることが多くなるだろう。そのため、豪華な彫刻を施したものよりも、シンプルなデザインで飾りが少なく、生花を引き立たせるものが増えてくるのではないかと思われる。

造花の可能性

造花の利点は季節に左右されることなく、欲しい花を使うことができ、枯れることがないという点である。今回の出展では祭壇に使われる造花ではなく、室内用(供花タイプ・花輪タイプ)の花輪が主である。花輪の需要は年々減少しているとのことで、造花会社も危機感を強め新商品開発を行っている。

また、葬儀後の仏前・墓前の供花として、菊を中心とした従来の仏花や洋花を組み合せた数種類の仏花が展示されていた。洋花は仏花でなくとも使用できる仕上がりで、葬儀後の使用にふさわしい印象を受けた。造花は購買頻度が高いものではないため、業者の展示用やインテリア、装飾として長期間の使用に向いていると思われる。

3.環境保護商品

環境問題に対し、葬祭業界の対策も必要となっている。厚生省は今年3月、「火葬場から排出されるダイオキシン類削減対策指針」をまとめ、排ガス濃度の指針値や設備基準を示したほか、副葬品も制限すべきだとの考えを示した。火葬場のパンフレットで注意を呼びかけるなどの動きも、いくつかの自治体で出始めている。プラスチックや化学繊維製品、不完全燃焼からダイオキシン発生につながる書物や果物などを、納棺の際なるべく副葬品として入れないよう、協力をお願いするという内容である。このような動きを受け、展示会では環境保護を大きくうたった商品が多数見られた。

再生紙を使用した棺

紙製の棺というのは段ボール製など、以前からあった。しかし、再生紙で棺を作るというのは環境保護という点から画期的であろう。この棺は木枠フレームに再生紙パネルを使用。外装には鳥の子和紙を使用し、希望のデザインを刷り込むことができる。その人を表現できるオリジナルの棺を創ることができる。また、外装のデザインとして副葬品を刷り込めば、ダイオキシンの発生も防ぐことができる。そこ板には防水加工が施され、水漏れの心配はない。耐重量実験では400キログラムを超えるなど、使用において問題はないようである。

返礼品

今回出展の返礼品業者には、簡易包装という動きは見られなかったが、ダイオキシンの生成を抑制する新素材を使用した商品もみられた。全体にパッケージのデザインに凝る傾向が見られたが、今後ごみ問題が深刻化することを考えると、返礼品といえどその方向性を見直す必要性が考えられる。

返礼品はそのパッケージに目が行きやすいが、その商品の内容が環境だけでなく、人にやさしい商品をつくろうというコンセプトの商品作りもされている。お茶については有機栽培・減農薬で栽培した茶葉を使用したものや、天然素材を使用しただしなどが商品化されている。

4.映像とメモリアル商品

映像による演出

映像で故人を偲ぶという、商品が何点か展示された。静止画だけでなく、ビデオのような動画まで多彩であった。

式場入口の案内板に故人の写真を入れた商品。遺影額や遺影台を発光させ、写真を演出する商品が静止画の主な商品である。

動画としては、故人の思い出ビデオの製作については数社が行っており、それぞれの商品に特徴が見られた。ビデオは故人の写真をもとにつくられる。内容例としては、出生地、生い立ち、結婚、社会生活仕事、趣味、哲学、晩年の生活、故人の生きた時代の背景を盛り込み、写真、文章、音楽を加えて構成編集したものである。

日本消費者協会の「葬儀についてのアンケート調査」(99年9月発表)は、葬儀に出席した経験のある人に「葬儀に参列して感動を覚えたことはありますか」と質問したところ、ないと解答した人が62.1%あった。つまり、葬儀に参列して感動を覚えたことがない人が、半数以上を占めている。何をもって感動とするかはむずかしいが、故人を知らないためにその葬儀にも興味・感心が生まれないということは考えられないだろうか。

また、静止画動画の両方が映し出せるシステム商品の紹介もあった。葬儀式中は遺影写真として静止画を使用し、告別や故人紹介の場面ではビデオ映像の動画を使用することが可能である。このシステムを会場の中心に設置すれば、祭壇にかわるものとして使用することも可能である。

これらの映像による演出機器は、葬儀演出において有効と思われる。ただし、映像の使用により葬儀式よりも告別に重心が移るように思われる。映像を多用するならば、無宗教葬儀での使用やお別れ会といった告別の意味合いの強いものに使用する方が、より適していると考えられる。

メモリアル商品

葬儀後に故人を偲ぶためのものがメモリアル商品である。メモリアル商品として最も一般的に用いられているのが写真で、写真を使用した商品がいくつか出展された。

写真は年月が経つにつれ色があせてしまう。そこで写真を長期間保存可能にする製法が紹介されていた。

5.棺と副葬品



棺は木彫り、布張り、合板プリントがよく知られている。今回は特徴ある材質を使用した2品の展示が目を引いた。

一つは漆塗りに蒔絵をほどこした棺。伝統技術により、格調の高さと高級感があふれる贅沢な棺である。社葬などの大型葬儀に使われるのではという予想とは裏腹に、「社葬ではなく個人の葬儀で使われることが多い」とのことであった。棺にお金をかけるということも価値観の多様化や個別ニーズのあらわれであろう。

もう一つは、木枠フレームに再生紙パネルを使用した紙製の棺。外装には鳥の子和紙を使用し、希望のデザインを刷り込むことができる。その人を表現できるオリジナルの棺を創ることができる。副葬品を刷り込めばダイオキシンの発生も防げるなど、環境問題を考えてつくられている。

これら2種類の棺は伝統的で高価なものか、環境に配慮したものかという方向性の違いはあるが、どちらも個性を演出するという点では共通している。

死装束

副葬品ではないが、納棺時に使用する商品という視点から死装束を取り上げたい。仏式葬儀では、納棺の際に遺体を死装束と呼ばれる旅姿に着替させる。これは全身白づくめの装束で、死出の旅立ちを意味している。

死装束は2社の展示があった。1社は仏衣専門店で、仏教の教義や慣習を忠実に商品化した本格的仏衣。来迎図を友禅風に描き、各宗派の名号が輪袈裟のように書かれ、三宝印を朱印してある。仏教に則ったデザインである。

もう1社は絹製の着物の死装束。白無地や草木染や花びら染めで満月や流水、桜などの自然を表現した華麗な図柄のものまでデザインはさまざま。手書きのため、希望のデザインにすることもできる。こちらは呉服店の事業部ということで、宗教色はなく、着物という視点から作られたものである。絹の消費活性化のための新規事業ということであった。高額商品であるが、普段から着物を着る人にとっては納得できる価格とのことである。

副葬品

副葬品には金属などの材質により制限される。そこで入れられないものを木で作り、副葬品として納めるという商品が提案されている。釣竿、ゴルフパター、ゲートボール、カラオケマイクといった故人の趣味に関連するものが商品化されている。故人に持たせてやりたいと考える遺族が、このような商品を利用するのであろう。

追悼メッセージカード

故人へのお別れの言葉や感謝の気持ちをメッセージカードに記入し、副葬品として納棺するという商品である。葬儀前に記入しておき、葬儀中は供花や弔電などと共に祭壇に供えておく。出棺前に棺に入れる。棺に入れず、故人の思い出として保管しておくことも使い方として考えられる。

もともとは寄せ書きのようなものだろう。あわただしい葬儀中でも故人へのメッセージを記すことで故人のことを想い、気持ちを整理する機会をつくることができる。

その他の副葬品

故人の趣味に関するものや愛用品を副葬品とすることが一般的であるが、来世への幸せを祈る十三仏の副葬品の出展があった。その十三仏は水引で作られたものである。水引には清めの意味があるそうで、その十三仏を供えることで故人の供養としようというものである。

副葬品全般について言えることは、新しい商品であるため、それを浸透させることが容易ではないということであろう。

価値観が多様化している現在、何にこだわりお金をかけるかは個人によって異なるのが当然だろう。副葬品は必ず必要というものではなくオプションの部分に当たるので、販売が爆発的に伸びることは難しいように思われる。

まとめ

これからの葬儀がどう変わっていくかは、消費者や葬儀社の方向性だけでなく、商品を制作する企業の方向性によっても変化する。このフェアはそれを一堂に見ることができる重要性をもっていたといえるだろう。

祭壇は、個人葬においても生花祭壇を普及させようという動きが見られた。現在、葬儀の式場として、自宅よりも葬儀会館の方が多いことから、生花祭壇の設営は行いやすいと考えられる。しかし個性的な生花祭壇では、その利点が失われてしまう。そこで、普及する形としては白木祭壇に生花を足した程度のものが多くを占めるだろう。棺に重点をおいて個性的なものにするかどうかは、消費者しだいであろう。また、祭壇と棺のつりあいがとれているかという点から考えると、個性的な棺を選んだ場合、それに対応する祭壇をどうするかという問題がある。棺にあった祭壇までをトータルに設計するか、棺をメインに持ってくるかといった葬儀全体のコーディネート提案ができれば、消費者は受け入れやすくなるのではないだろうか。

IT関連の活発化や環境保護商品は、葬祭業界だけでなく、社会全体に見ることのできる動きである。保守的で変化が遅いといわれる葬祭業界でも、その流れを無視することはできない。時代に取り残されることなく、他の業界の動きにも目を向けていることは必要であろう。

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