1999.07
死とシルバーデータ(2)

  死や葬儀の周辺で何が起きているかを知るには、まず関連データを収集することから始まる。今回のデータは葬儀についての消費者の意識と末期から死に至るまでの料金である。


葬儀意識

希望する葬儀は(1)簡素 (2)心のこもったもの (3)身内だけ

  静岡新聞(95.8.12.夕)によると、静岡市内の主婦ら約20人でつくるグループ「さなえ会」は、市内の318人を対象に「葬式・お墓の意識調査」(95年)を行い、「葬儀をどうしたいか」の回答は、(1)簡素に(2)心のこもったものを(3)身内だけで、を希望している人が多かった。又、「葬儀費用の総額はどの程度必要か」の問には、「分からない」と答えた人が約4分の1あった。

格安な公営「葬儀会館」の希望者が7割を超す

  ライフデザイン研究所の「葬儀に関する意識調査」(96年)に、自分の葬儀は「ある程度決め、遺族に託す」が43.1%、「遺族に任せる」が38.5%であった。今後の葬儀サービスに期待したいことでは、「自治体による格安な葬儀会館の設置」と「自治体による死後手続きの代行」が7割を占めた。また「葬儀の生前契約」も34.2%が希望していた。

神奈川県の葬祭費用は94万円

  神奈川県の「葬祭サービスに関するアンケート」(97年)によると、最近5年間に葬儀を行った県民の葬儀費用は平均236万円、香典返し費用は94万円、香典などの収入196万円という結果が出た。意識調査では、葬祭業者に求めるものとして6割以上が、「希望通りの葬儀の実施」「価格設定のわかりやすさ」と回答している。
  葬儀に必要なことは「故人をしのぶ」が91.1%でトツプ、「遺族を思いやる」76.9%、「その人らしい葬儀」74.3%。葬儀の際に知りたいことは「一般的な葬儀のレベル」「葬儀手順」「費用の積算根拠」の順。(97.11)

4人に1人はお墓の承継者なし

  厚生省は墓地に関する全国意識調査を98年2月、東京都区部を含む全国123地点で行った。問題と思われている点は、墓地の「高騰」(43%)、「不足」(34%)、「承継者がいない」(27%)が上位3位。将来、自分の墓の承継者がいるかの問に対し、「いる」は半数の51%。「期待する人はいるが決まっていない」(23%)だった。

本人は散骨でよいが、家族は…

  散骨で有名な「葬送の自由をすすめる会」は、1991年10月に相模灘で最初の散骨を行った。97年末までの会員数は7,500人。この間254回で472人の遺灰がまかれた。散骨のニュースはマスコミにも取り上げられ、自分も死んだら散骨してほしいという人が増加した。
  ライフデザイン研究所が40〜80歳代の男女に「先祖祭祀の実態」(96年10月)を調査したところ、3割が自分の墓がなく、約4割が自分の遺骨を「散骨してよい」と考えている。自分が入る墓を「持っていない」(30.3%)、「先祖の墓がある」(27.6%)、「親が購入した墓」(30.6%)、「新たに自分たちで購入」(14.8%)の順。「散骨」については「全部散骨してもよい」が26.01%、「一部だけならよい」が15.8%。「他人はよいが、自分は嫌だ」が23.9%だった。
  互助会のくらしの友が、首都圏で行った「お墓に関する意識調査」(96年)によると、希望する埋葬方法は「墓地」が69.5%と最も多い。一方、「散骨」は22.1%。自分が死んだ時は「自分たちで購入した墓に入る」が39.2%でトップ。
  リビング生活研究所が行った「女性のお墓意識」に関する調査(99年)で、遺灰の処置に散骨を希望とした人が3割を越えた。サンケイリビング新聞に載った結果によると、「自分の死後、お墓や埋葬はどんなスタイルがいいか」の質問に、「自然葬」が30%、次は「伝統的な墓」(27%)、3位は「芝生墓地」(22%)の順となっている。これに対し、近親者の死後処置は「伝統的な墓」が50%で一番多い。自分は散骨でいいが、家族にはお墓に入ってもらいたいというのが実情である。

葬儀相談のトップは「お布施」

  (財)日本消費者協会は、98年12月4日から3日間、東京、大阪、福岡で行った「葬儀なんでも相談」の集計結果を発表。問い合わせは514件で、その内容は、納骨、墓地、散骨の遺骨関係が80件(15%)。布施、戒名が79件(15%)、葬儀費用が36件(7%)であった。


宗教・宗派データ

神道信者は3.8%

  神社本庁が1996年10月「神社に関する意識調査」を、全国の成人男女2,000人を対象に行った。それによると、「信仰している宗教は?」では、仏教38.7%、神道3.8%、創価学会3.4%、わからない2.9%、キリスト教0.9%その他0.8%、信じていない49.5%。「あなたの氏神様を知っていますか?」については、知っている72.6%、知らない27.4%。「家庭に神柵があるか?」の質問では、ある51.3%、ない48.5%。ちなみに『宗教年鑑』(平成10年)で神社本庁の信者数を調べてみると9,415万人と記録されている。これは初詣に出かける数と間違えているのではないか?

カトリック教徒の人口は44万人

  日本国内のカトリック教徒の人口は、1996年12月の調べで44万198人。東京教区が8.3万人、長崎教区が6.9万人、大阪教区が5.5万人の順。文化庁『宗教年鑑』平成10年によると、カトリック中央協議会が44万人、プロテスタント系の日本基督教団が14万人とある。

大学生、死後の世界57%が肯定

  日大の宗教学と上智大学の学生514人を対象に、93年6月「死生観」についてのアンケート調査が行われ、「死後の世界がある」と答えたのが56.8%であった。また「従来の慣習に従って墓に入ろうと思う」と答えたのが67.9%で、保守的な面があるのがわかる。

宗派の教えよりも墓や葬儀に関心

  曹洞宗が都市部に住む同宗の壇信徒の宗教意識をまとめたもの(94年)によると、壇信徒の関心はもっぱら墓や葬式にあり、宗派の教えは2の次の様子。宗門のご本尊、宗祖についての問には、7割以上が「知らない」と回答している。なお墓を持っていると答えた人は91%とその普及率は高い。

「死後、魂は残る」は50%

  朝日新聞は95年9月23日付け紙面で、宗教についての世論調査結果を発表した。「信仰する宗教はない」と答えた人は63%で、60才以上で14年前の調査の34%から49%と急増したのをはじめ、中高年層で無宗教者の増加が目立った。「死後、魂は残る」と考える人は60%から50%とかなり低下した。「死後、魂は残る」と答えた割合は男性42%、女性58%となっている。家に仏壇があると答えた人は、大都市で47%である。

宗教を「信じていない」が78%

  読売新聞社は98年5月に、葬儀やしきたりについての意識調査を行った。それによると、縁起や迷信に関することで気にするものは、「友引の日の葬式」36%(79年調査では59%)、「北まくら」26%、「葬式帰りのお清め」24%など。都市規模別では、大都市よりも町村の方が縁起を担ぐ傾向が強いが、「葬式帰りのお清め」だけは町村21%よりも大都市に27%と多かった。宗教を「信じている」は21%で、「信じていない」が78%を占めた。日本の葬儀は仏式が9割で行われているが、このアンケートを信じる限り、仏式葬儀が形骸化しているといわれてもしかたがない。

年間5,000件の仏事相談の傾向

  仏教情報センター(電話03-3811-7470)には、年間(96年)4,264件の電話相談があり、相談者の7割が女性。相談内容は、「人生相談」(21%)「布施及び金銭」(13%)「慣例、マナー」(10%)「墓、骨」(9.5%)「法要・仏事」(9.2%)「信仰問題」(7.6%)などの順。その他の相談センターに「こころの電話/曹洞宗」(03-3454-5410)、「ビハーラ電話相談/浄土真宗」(03-5565-3418)などがある。

友引きの葬儀

  「友引き」に葬儀をしないのは迷信であると浄土真宗の僧侶が異議をとなえている。日本の火葬場の約1,600ケ所のうち、友引に火葬を行っているところは仙台市や福岡市などわずかに74ケ所(4.6%)という(98年)。つまり残りの95%が友引は休みということになる。読売新聞が98年5月におこなった調査では、「友引の葬儀」を気にしている人は36%であるという。今後死亡者が増大することから、時代の流れとして友引でも葬儀をするようになるだろう。


ビジネス・データ

2010年の医療・福祉関連分野は12.4兆円市場

  通産省の諮問機関である産業構造審議会がまとめた中長期的な産業構造を展望した報告書(94年)で、住宅、医療、福祉関連など12の分野を成長市場と見込み、2010年の医療・福祉の市場規模を12.4兆円と予測している。福祉分野では(1)福祉用具産業(2)在宅介護、レンタル、セキュリティーなどのシルバーサービス(3)ゴールドプランに関する施設、駅などの公共機関の高齢化対応整備の3点が期待されるとしている。

高知県内の葬祭市場は50億円

  高知銀行がまとめた「高知県の葬祭業」(95年)によると、県内の葬祭マーケットは年間50億円で、人口の高齢化とともに、今後40年間は成長が期待できるという。高知県内の葬祭業者数は約90社で、葬儀マーケットは約50億円と推計している。これは平成6年の県内の死亡者数(7,960人)に、全国平均の1人当たり葬祭費655,000円をかけた数字で、花輪や墓石などを含めると80億円産業となる。

斎場派が半数超し、葬儀費用初のマイナス

  互助会のくらしの友のアンケート調査(96年)によると、首都圏では、葬式用の「斎場」を使用した人の割合が52.2%と初めて半数を超し、自宅葬儀は17.9%に減少した。葬式費用の平均は3年前に比べ、20万円減の385万円であった。過半数の53.1%の人が葬儀費用を「高い」と感じている。

斎場年々増加数

  『フューネラルビジネス』96年12月号に、同誌の調査による全国の斎場数が載っている。それによると民間・公共斎場数は1,627施設。開業年がはっきりしている750施設については、70年代が55施設、80年代が233施設、90年代では441施設。93年以降は建設ラッシュで年間200施設に届くのではないかと推測している。

「生命保険契約者保護機構」がスタート

  もし、加入している生命保険会社の経営が破綻したら、万一の場合、保険金は受け取れるのだろうか。こうした不安を解消するため、98年12月1日、「生命保険契約者保護機構」が発足した。これまでの生命保険契約支援制度に代わって、新たな生命保険契約者保護の仕組みが動きだした。補償範囲を明確にし、救済会社が現れない場合にも対応できるなどの制度になった。

サービス業は95年度の水準に戻る

  日本経済新聞社がまとめた「第16回サービス業総合調査」によると、97年度の売上高は前の年度に比べ5.7%増となった(対象は2,491社)。不況の長期化で、サービス業各社の状況は厳しい。
  葬祭業17社の97年度売上高は前年度比が1.3%増。自宅での葬儀が減少し、各社とも葬儀会館を作って努力をしている。在宅介護・在宅入浴サービスが前年度比21.9%増になったのに対し、有料老人ホームは0.9%増と前年度並みにとどまった。

肩身のせまい宮型霊柩車

  宮型霊柩車の乗り入れを禁じる火葬場が増えてきたせいか、宮型の霊柩車の割合が年々減少し、98年2月の調査では全国では4割を割っているという。宮型が普及している地区は東京で152台、続いて北海道の140台の順。

シルバーマーク認定事業者は1,005社

  シルバーサービス振興会(東京都)は、99年2月1日付で185社にシルバーマークを認定した。これによりシルバーマーク認定事業者は1,005社となった。シルバーマーク制度は89年、良質なシルバーサービスを確保するため設けられ、今回の認定は36回目。業種は在宅介護サービス、在宅入浴サービス、福祉用具レンタルサービス、同取次店、福祉用具販売サービス、在宅配食サービスの6業種。

「シルバースター登録制度」

  全国環境衛生営業指導センターは、「高齢者のための環境衛生関係営業サービス改善ガイドライン」(91年3月)を作成した。このガイドラインを踏まえ、高齢者が利用しやすい旅館サービスの普及を図るため、宿泊施設や料理、サービス等の面で高齢者が利用しやすい一定の基準を満たした旅館、ホテル等を全国ホテル旅館振興センターが認定・登録する「シルバースター登録制度」が93年6月から実施された(98年4月末現在登録数611件)。


費用データ

引退後の準備金は2,316万円

  明治生命フィナンシュアランス研究所の「調査報」(94年)によると、引退後、夫婦2人で生活するための月額費用は、「25万から30万円未満」と答えた人が23.4%と最多。次いで、「30万から35万円」が21.4%。引退後の収入源では、「公的年金」が72.1%ともっとも多く、次いで「就労による」が30.1%、「預貯金の利子」が22.8%であった。現役が希望する準備金額は平均4,624万円であるが、実際に準備した金額の平均額は2,316万円である。

介護費用は年間69万円

  「要介護者を抱える家族」についての実体調査を日本労働組合連合が行なった(95年)。これによると、介護場所は、「在宅」が6割、病院が2割。要介護年数は「5〜9年」が25.0%。「15年以上」が6.1%も。介護費用は平均69万円。介護費用は場所によって違い、「病院」が116万円。「施設」が77万円、「在宅」が52万円。費用の内訳では、施設では「医療費」に31万円、在宅では「住宅の増改築費」が19万円かかる。

介護費用は1,575万円より

  身内が7年間、要介護状態にあったらいくらかかるかという試算がある(『毎日新聞』95.9.18)。老人病院を利用した場合、840万円から4,200万円。在宅でヘルパーを月25日間頼んだ場合、1,575万円から2,625万円。痴ほう者向けのケア付き有料老人ホームの場合、3,680万円から5,520万円。要介護状態の支出額の平均が月25.6万円に対し、支払い可能額の平均は16.2万円である。
  経済企画庁の平成10年度『国民生活白書』には、介護費用について、「生涯にかかる平均的な介護費用の総額のうち、全体の7割の人にとっては、生涯を通して100万円に満たないが、一方で、10人に1人は570万円以上になると推計される。 年間10万人が家族を介護・看護するために離職しており、介護のための離職によって収入が得られなくなる心配があることも、消費を抑えている可能性があると考えられる」と述べている。

介護保険制度開始

  2000年4月から介護保険制度が導入される予定である。介護保険制度は、介護が必要な人とその家族を支援する目的で制定された。40歳以上のすべての人が介護保険料を負担しなければならない。この他、介護保険サービスを利用する際にも費用の一部を負担する。
  65歳以上の第1号被保険者、40歳以上65歳未満の第2号被保険者にわけられ、保険料の納付方法は、1号は公的年金から天 引きまたは、市 町村へ直接納付。2号の健康保険・国民健康保険加入者は、健康保険料と一緒に給与から天 引き。保険料の半額は事業主が負担。1号被保険者の中には、年金生活者や無年金者等が3割近くいると言われ、負担できなければ、介護保険サービスを受けられない事態が出る恐れがある。また、第2号被保険者の場合、健康保険料と同様に事業主が介護保険料の半額を負担する必要があり、会社の負担が増える。

延命コストの点検

  日経経済研究センターの調べ(95年)によると、老人の死亡に際してかかる医療費が増加し、終末医療の規模は1兆43,200億円とみられる。死亡前の1年間の総額は1人平均約235万円で、その20%が最後の月に集中している。70歳以上の死亡者数は年間約56万人だから、日本全体で約1兆3,200億円で、老人医療費の19%に相当する。その終末医療費の内容をみると、治療のためではない延命医療が広範に行なわれており、死亡月の医療費用は費用全体の3分の1を占める。

お布施の額は58万2千円

  冠婚葬祭互助会「くらしの友」が首都圏の630世帯を対象に行った「現代葬式実態アンケート調査」(96年)によると、葬儀費用は平均385万円。布施(戒名+お経)の相場は58万2,000円。香典は1万円(39.4%)、5,000円(37.6%)が主流。香典返しは「半返し」が81.3%を占め、当日に行う人が増加しているという。

慶弔金は年平均15万円

  東海銀行が男性会社員に慶弔金を聞いたところ、年間平均支出額は150,953円で、2年前の調査より2割減った(96年9月)。98.8%が慶弔金を贈っており、年間平均支出回数は11.3回。項目別では、香典4.5回と結婚祝い1.7回が多く、1回当たりの平均支出額は香典7,357円、結婚祝い32,095円。

 

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