1999.03
しきたり110番(2)

  これまで長く続いてきたしきたりも、核家族化の進む現代では、分からなくなってしまっている場合が少なくない。そこで先回に引き続き、インターネットでセキセーのホームページに寄せられたしきたりのQ&Aを取り上げていく。


■銀行預金の名義変更

Q:2月に父を亡くし、遺産を兄弟3人で相続をする事になりました。相続額はわずかなので非課税ですが、銀行預金の解約が必要かと思います。その用紙はどこで手に入れればよいでしょうか、それとも自分で作成してもよいものでしょうか。

A:こちらは法律の専門家ではなく、その資格もありませんので、調べられる範囲でお答え致しますので、最終的には専門家への確認をお願い致します。
  預貯金に限らず相続財産は、相続人の間で配分が決定するまでは法定相続人全員の共有扱いとなりますので、その一部をどなたかが取り扱うためには、法定相続人全員の合意が必要となります。
  相続人全員の取り決めを公的な文書にしたものが、「遺産分割協議書」です。この「遺産分割協議書」の作成には、すべての相続財産が記述されている必要があり、「遺言(書)」の有無なども関係してきますし、記述にはかなり細かい注意が必要ですので、専門家に相談されるなどして下さい。書式は決まったものはありません。
  預貯金の相続に関しては、取扱い銀行ごとに必要となる証書類が異なっているようです。預貯金の名義変更をしたり引き出したりする場合は、上述の「遺産分割協議書」を窓口で提示して、正当な相続人であることの証明をしなければなりません。
  なお「遺産分割協議書」は、作成するのに時間がかかると思いますので、預貯金に関して相続人同志の同意ができているならば、預貯金だけ先に取り扱えるよう、預貯金についての相続人全員の署名押印のある同意書を作成するという方法もあります。
  このような準備が整えば、銀行の窓口で用意してくれる相続届(兼相続預金受領書)に記入押印し、正当な相続人であることの証明書を提示して、名義変更・引き出しが可能となります。

 

■生命保険金の受取り人

Q:保険金の支払いについて、ご相談したいことがあります。私の兄が先日事故で他界したのですが、本人が加入していた保険の受取人は、離婚した元妻でした。本人が受取人の名義を変更しなかったようなのです。保険の支払いの説明を聞きに行ったところ、受取人の名義がその元妻なので、その元妻の請求がない限り保険の支払いは出来ないと言われました。その元妻が請求権の譲渡または放棄は出来ないものなのでしょうか?もし出来るようならばその方法を教えてください。

A:基本的には、保険金の受取人である元妻は、離婚しても資格上は保険金を受け取る権利があります。生命保険は相続財産とはみなされませんので、保険金の受取りは受取り名義人であり、相続人であるというだけでは権利は生じません。元妻に渡したくない件については、受取人の名義変更がない限り変更できません。しかし生命保険の加入者が死亡したあとでは名義変更はできないでしょう。詳しい点については弁護士など、専門家に相談されるとよいと思います。

 

■法要の服装

Q:1. 日の法要には何を着たらよいのでしょうか?和服でしょうか? それとも洋服の喪服でよいのでしょうか?
  2. 初盆には何を着たらよいのでしょうか? 和服の喪服でしょうか?
  3. お彼岸には何を着たらよいのでしょうか? 和服の喪服でしょうか?
  4. 一周忌は和服の喪服を着ますが、五つ紋の黒の正装で臨むべきでしょうか?それとも半喪服(色無地に黒の帯)でよいのでしょうか?

A:喪服には、正喪服と略喪服があります。女性の場合の正喪服(正装)は、和服ならば五つ紋付きの黒無地に黒の帯、洋装ならば黒無地のワンピースやツーピース(ブラックフォーマル)です。略喪服は和服ならば色無地に黒の帯、洋装ならば地味な色のスーツなどとなりますが、ブラックフォーマルを着用される方がほとんどです。
  一周忌、三回忌と回を重ねるにしたがって、喪の表現は少なくしていくのが一般的です。和装、洋装のどちらを着用するかについて、特に決まりはありません。
  1. 日=葬儀に準じます。正喪服を着用します。
  2. 初盆 =正喪服を着用するのが一般的です。
  3. 彼岸 =特にきまりはありません。平服で良いでしょう。
  4. 一周忌=あなたが喪主をつとめたこともあり、正喪服を着用されるのがよいでしょう。

 

■新盆での服装

Q:父の新盆を控えております。新盆の場合、墓への送り迎えの際の親族の服装は、喪服を着用するものなのでしょうか。なお、宗派は日蓮宗です。

A:初盆に、遺族として親族の皆さんと墓参りされるときは、喪服が正式です。
  しかし、内々で行う小人数の場合は暑いこともあり平服で行かれる方もいる様です。一般的には儀式のときは地味な服装で、盆棚などの諸行事は平服でよいと思われます。

 

■女性用の礼服

Q:お葬式は、女性はパンツルックは活動的なイメージになるためよくないとテレビで見ましたが、どうなのでしょうか。

A:東北地方では、冬など寒いこともあり、女性がパンツスタイルの喪服を着用されることもあるそうです。また、百貨店のフォーマルウエアコーナーでは、月に1着程度の割合でパンツスタイルの喪服が売れていますので、式典でパンツスタイルをしている人がわずかながら見られることが考えられます。
  正式な服装とはいえませんが、失礼にはならないと思います。 その際、ブラウスは白ではなく黒にします。靴下も同様に黒です。また、スカートでもくるぶし丈の喪服もあります

 

■年賀欠礼の有無(1)

Q:離れて住んでいる兄弟が突然亡くなりました。約半年になります。年賀状をどうしようかと悩んでいます。喪中に当てはまるのでしょうか?教えてください。

A:喪中期間内に新年を迎えるときは、年賀欠礼状を出す習慣があります。忌の期間は、官公庁の忌引き期間によりますが、忌が明けると社会生活に戻ることが通例となっています。年賀欠礼の際の喪の期間は、明治時代に作られた忌服期間が基準となり、両親が死んだときで1年、夫1年、妻3カ月、子供・兄弟は3カ月、祖父母は5カ月、叔父叔母は3カ月となっています。 しかしこの喪に服す期間の基準は儒教をもとにしており、現代において必ずしもふさわしいとはいえないでしょう。
  年賀欠礼は、遺族が故人と同居していたかどうか、あるいは手紙を出す先が故人のことを知っているかどうか、家同士のつきあいなどを基本として決めますので、仕事関係先などには、(配偶者側の服喪である場合など)服喪に関係なく欠礼を省略する場合もあります。
  従いまして、兄弟は3カ月ですが、その年に亡くなられていたら年賀欠礼をされる場合があります。ただし上にのべましたように、死亡通知を出されていない先などには、服喪に関係なく欠礼を省略する場合もあります。

 

■年賀欠礼の有無(2)

Q:毎年、夫婦連名で年賀状を出しているのですが、妻の実兄が亡くなった場合、喪中となるのでしょうか?また、喪中となる場合は、夫婦連名で欠礼の挨拶を出す時は、誰が亡くなったと書けばよいのでしょうか?「妻の兄」? 「義兄」?いろいろ調べたのですが、よく分かりません。

A:義兄弟の場合には喪は3カ月ですが、こうした喪の月日に関係なくその年に関係者を亡くした方は年賀欠礼をされる場合があります。ただし仕事関係先などには、(配偶者側の服喪である場合など)服喪に関係なく欠礼を省略する場合もあります。奥様と連名で出される場合には、ご主人の名前が先に来ると思いますので、ご主人からみた続き柄(義兄)を書き、差し出し人のところには奥様の名前を併記されればよいと思います。

 

■服喪中の披露宴

Q:親族が亡くなったりすると喪中につき年賀状をださない旨知らせますね。そうすると、その亡くなった年に慶事、たとえば結婚披露宴に出席するのは失礼なのでしょうか。マナーの上ではどういうことになりますか、教えてください。

A:喪に服している方が、祝いの席に出席することはよいかどうかという質問かと思います。
  その場合、喪の期間は神社に行くことは避けるようです。それは神道は死を忌むからです。しかし結婚などの祝い事ですと、当事者ならば避けるほうが無難ですが、友人として参加される場合には、相手側が気にされなければかまわないと思います。

 

■喪中の方への御歳暮

Q:喪中につきという年賀欠礼の案内を頂いた方へのお歳暮は、贈っても失礼にならないでしょうか?

A:御歳暮は、お祝いやお悔やみに関係なく行われているケースが多く、年賀欠礼のご案内を頂いた方に対しても、お歳暮をお贈りしても失礼ではありません。

 

■納骨式の表書き

Q:祖母の納骨式に亡くなった両親のかわりに出席するのですが、お包みの表書きと袋の色がわかりません。また金額はいくらくらいが一般的なのでしょうか?

A:表書きは「御供」または「御仏前」、水引きは黒白、黒銀、双銀で、のしはつけません。金額は、年忌法要と同じように考えればよいでしょう。また式のあと食事が出たり、引き物が出ることがありますので、それも考慮する必要があります。

 

■会社からの香典金額

Q:会社の社員が交通事故で亡くなりました。その時の対応に困りましたので教えて下さい。
  1. 会社が包む場合の香典の相場は?
  2. 会社の代表がお通夜に行く時は、香典は、会社それとも個人でするのか?
  3. 告別式に会社から数名行くときは、役員は、会社と個人どちらですべきですか?
  4. お通夜と告別式のどちらに行くべきですか?よろしかったら、教えてください。

A:この問題のポイントは、死因が業務上の事由か、そうでないかにより対応が異なります。それがわかりませんので、1の業務上としてお答えします。
  1. 会社としての対応は、死亡原因により(労務上など)過労や事故などで労災扱いをしたり、死亡した人の社内業績、地位、あるいは弔慰金規定などによって香典額や弔慰金などが決まります。
  2. 3. については社長名で香典を出したり、個人的に出すこともあります。役員についても通夜に社長が、会社から香典を出していれば、個人としての香典でよいと思います。
  4. 直属の上司、あるいは同僚であれば葬儀・通夜の両方出席しますが、その他の社員の場合は話し合ってどちらかに出席します。

 

■香典返しのお礼

Q:父にお香典を渡してもらい、後日初七日の挨拶とともにお返しが届けられました。そのお返事をはがきで出したいと思うのですが、どのように書いたらよいのでしょうか。

A:日本の慣習では、香典返しを受け取ったときにお礼をすることはしません。返事を出す場合には、「ありがとう」などの表現を避け、「丁重なるお気づかい、恐縮に存じます」というような文面にいたします。

 

■香典返しなしの文例

Q:香典返しをせず、その分を福祉関係に役立てることとしたいのですが、このとき、お香典をいただいた方々への挨拶をどのようにすべきか、文案等あればご教授ねがいます。

A:文面では詳しい事情が不明ですが次のように作ってみました。
  (例)
  謹啓 時下益々ご清栄の段、お慶び申し上げます。
  過般(氏名)儀、永眠の際、ご多用中にもかかわらず、ご会葬を賜りご芳情のほど厚く御礼申し上げます。
  本日(戒名)儀、七七忌に当たりますので、近親者のみにて、法要を相営みました。つきましては、甚だ勝手ながら、(故人の遺志により?)ご芳志の一部を福祉関係の(施設名)に寄付を致し、御礼に代えさせて頂きましたので、何卒ご了承くださいませ。
  以上略儀乍ら、書中をもってご挨拶申し上げます。  敬具

 

■キリスト教の表書き

Q:私の知人が亡くなったと聞き、香典等を用意しようと思うのですが、キリスト教なのでどの様にしたらよいのかが分かりません。

A:カトリックかプロテスタントか分りませんが、どちらにしましても、香典の表書きは「お花料」にします。袋の水引きはしません。
  金額は、ご関係によりますが、知人の場合3千円〜5千円でしょうか。
  キリスト教の葬儀の進行は、一切教会が行います。流れに従ってゆけばよいと思います。数珠は必要ありません。

 

■僧侶の呼称

Q:自分のお墓のあるお坊さんを、なんとお呼びすればいいのですか?失礼のないようにしたいので、よろしく、お願いします。

A:旦那寺の住職のことを、普通「ご住職」とお呼びします。ただしこの場合は、お寺の代表者を指します。葬儀の時には「ご導師」という言い方をしています。

 

■弔電先の呼び方(2)

Q:職場から、職員の不幸への弔電を打つ場合。当人の父親の場合、「ご尊父様」、当人の母親の場合、「ご母堂様」当人の配偶者の父親の場合「ご岳父様」では、当人の配偶者の母親の場合はなんと呼べばよいのでしょうか。

A:義理の父を岳父、義理の母を岳母といいますが、電報においてはご岳父様、義理の母の場合には、ご母堂様を使用しているようです。

 

■手伝いに対するお礼

Q:地元の隣近所の人たちに受付などの手伝いを頼むことになりました。こういった方々へのお礼はどのようにしたらよろしいのでしょうか?香典は香典返しで、手伝いはお礼状がいいのでしょうか。もし、お礼にお金を包むのであれば相場等も教えてください。

A:葬儀のお手伝いは、お互い様なので本来はボランティアです。ただしお世話になった方々に鄭重なお礼を申し上げる事が大事です。お礼の形としては、精進落としの食事にお招きして接待するということが比較的多くおこなわれています。その場合には謝礼を包む必要はないと思います。
  それでも地域の習慣によってお礼をする所があれば、その習慣に従うのがよいでしょう。その場合には、表書きは(御礼)として3千〜5千円が目安となるでしょう。

 

■骨上げの作法

Q:お骨あげのことでお伺いします。お骨あげのとき、なぜ二人一組になって一片ずつはさむのでしょうか?

A:収骨には竹ばしを用い、二人一組になって一片ずつはさんで骨壷に納め一度拾ったら次の人に渡します。この儀式を『はしわたし』といい、亡き人をこの世からあの世に送り届けるという意味が込められています。
  葬儀では、様々な作法を日常とは異なったやり方で行います。例として逆さ水、逆さ布団などがあります。こうした行為をすることによって、遺族は心理的にも日常世界から隔離しているものと考えられます。従いまして、日常においては、こうした逆さ事を行うことはタブーとして戒められています。

 

■ペット

Q:ペット(犬)の葬儀(燃やしてくれるだけでかまいません)について教えてください。

A:日本で飼われている犬と猫の数は約1,600万匹で、一日当たり約5,000匹が死亡。うち火葬を依頼しているケースは1,000件以上あるといわれています。つまり2割が業者を通して火葬されている計算になります。
  このようにある程度、ペット霊園、ペット葬儀社などがすでにビジネスとして確立されていると思いますので、地元のタウンページで連絡先などを確認されることをお勧めします。また公営の火葬場でもペットを火葬する炉をもっているところもあります。

 

まとめ

  今回は葬儀後の手続きや、法事の服装、服喪中の行い、香典返しのお礼、骨あげの作法などの質問を取り上げた。特に最近発生しはじめた問題というものではないので、マナーの本をみれば答えがのっていそうなものばかりである。
  葬儀後の手続きについては、法律に準じることになるので、最終的には専門家に確認してもらうことになるだろう。
  葬儀に関する質問の80%がよくある質問である。従って、とりあえずこの質問と答えを用意すれば、当座は凌げるのではないだろうか。

 

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