1996.03 |
最近あいついで葬儀関係の費用を伝える本が出た。一つは佐藤友之『図説死んだらいくらかかるか』(講談社95年6月)であり、二村祐輔『大往生の値段』(近代文藝社95年10月)である。また雑誌『プレジデント』96年2月号には、川嶋光『葬儀の値段』の記事が掲載されている。これらのなかで、葬儀のプロの立場から書かれた『大往生の値段』がもっとも詳しく、読んでいても内幕を知った者が描く迫力がある。具体的な料金表は、それらの本を参考にしていただければよいが、普段お目にかからないが、なーるほどと思うような数字は参考にさせていただいた。
葬儀費用の内訳は、大きく分けると次のようになる。
(1)葬儀施行にかかる費用
(2)布施・戒名料など寺院に支払う費用
(3)御膳料など食事接待にかかる費用
(4)粗供養品料など
これらの費用の目安を示す資料として、平成6年3月、大蔵省大臣官房公正管理官がまとめたものを見ると、
(1)葬儀費用は、会葬者200人のクラスで74万〜140万円まで。
(2)布施・戒名料は、布施が20万〜30万円、戒名料が20万〜25万。合計40万〜55万円となる。
(3)御膳料は、通夜振るまい、火葬場、精進落としの合計で約38万円。
(4)粗供養品は、通夜・告別式での合計が16.5万円。
以上の金額を合計すると168.5万円から249.5万円となる。
次は互助会のくらしの友が1993年に行ったアンケート結果である。集計項目は先の分類とほぼ対応するが、その平均額は
(1)葬儀業者への支払い = 154.8万円(葬儀費用の構成比38.2%)
(2)寺院に要した費用 = 75.6万円(18.7%)
(3)会葬者の接待費 = 58万円(14.4%)
(4)香典返し = 101.7万円(25.1%)
(5)その他 = 14.6万円(3.6万%)
で合計405万円となる。なお先の大蔵省の調査では香典返しの金額が含まれていないので、その分を100万円として合計すると、350万円程度となる。
『戦後値段史年表』(朝日新聞社)によると、約40年前の1955年(昭和30)の葬儀料金は、3段飾りが10万円、5段飾りが13万円である。それが20年前の1975年(昭和50)には、3段飾りが19.5万円、5段飾りが28.5万円と、20年間で約2倍となっている。もちろんその中でのサービス・アイテムも増えているから、一概に2倍とは言えないかも知れない。6年前の1990年では、それぞれ50万円、80万円となり、昨年95年では、60万円、100万円である。(資料提供は(株)博善とある)
湯かんを専門に行う業者があるが、入浴福祉事業を展開しているデベロ(茨城県)が、湯灌サービスに乗り出すという。デベロはこれまで、首都圏や関西の企業に湯灌サービスのノウハウを提供していたが、同社自体がサービスを開始するのは初めてという。料金は5万円から15万円。(流通サービス95.5.23)
戒名は値段をつけて売る商品ではないので、値段はあらかじめ決められていない。ただし戒名にランクがあることを漠然と知っている程度である。そこで困るのは喪家である。
くらしの友社のアンケートでは、寺院に要した費用が75.6万円(18.7%)とある。このうち布施(戒名料プラス読経料)は平均62.7万円という。
二村祐輔『大往生の値段』のなかで紹介されている、自分で施工して後日聞いたここ10年間くらいの戒名(お布施)の例を見ると、最も高いクラス(通夜・葬儀お経料を含む。僧侶5名)で、日蓮宗(近県)本山の場合、信士/信女で200万円。最も安いもので、臨済宗(地方)普通の寺院、お経料・車代を含む。院号なし居士/大姉で15万円とある。
また菩提寺のない喪家のために、日本仏教奉仕会が作成した「ご案内」がある。御法務(御通夜・御葬儀・初七日)のご依頼を承りますという案内に記載されている各宗派基準金額一例表には、俗名では15万円以上。戒名料/信士・信女=15万〜25万円。居士・大姉=25万〜35万円。院号・居士=50万円からとある。
新聞の死亡広告は、新聞の発行部数によって値段が異なる。同じ朝日新聞でも、全国通しとエリア判とでは当然料金が異なってくる。ちなみに5センチ×2段(6.8センチ)で93.5万円(東京)だが全国版では166.1万円となる。
94年4月に開店した骨壷専門店「江戸屋壷店」が、『月刊住職』10月号に紹介されていた。資産家は昔からオリジナルな骨壷をつくらせており、その金額は100万円から200万円である。また東京の人が出身地の窯元に特注する場合は、30万円から50万円という。同店には260種類の骨壷があり、値段は一律10万円という。
海に散骨する話はすっかり有名になったが、東京都に本部をおく「慰霊散骨/自然葬送の会」が、月刊『住職』94年4月号に紹介された。同会の入会金は3万円で月会費は3,000円。60カ月分で18万円となり、これが「慰霊散骨実費」となる。慰霊散骨では、遺族が持参した遺骨に対し「慰霊法要」が営まれ、次に親族とともに「お別れの法要」が営まれる。その後、骨灰は「道場」に移され、3日間の安置のあと、再度慰霊法要が営まれる。そして翌日早朝に、慰霊行法とともに奥多摩の雲取山中にまかれるということである。
労働者が業務上死亡した場合には、葬祭料が支払われる。平成元年度での額は25万円と給付日額の30日分の合計額、又は給付基礎日額60日分の高い方である。
次に社会保険の埋葬料は(報酬月額か最低10万円)。平成2年度に支払われた件数は約3万9千件で1件当たりの平均は27万384円。また家族埋葬料の件数は88,545件で、1件当たり平均は10万円となる。
平成元年度の国民健康保険の葬祭費給付金(1〜5万円程度が多い)では、件数が47万5,891件、1件当たり平均は34,394円である。次に日雇い特例被保険者(最大月間標準賃金、以下の場合は10万円)をみると、埋葬料支払件数は平成2年度で328件、1人当たり平均は14万4,865円となる。次に船員保険は葬祭料(月額の2ケ月分、以下の場合は10万円)支払件数が572件、1人当たり平均は56,000円である。(91年「年金と保険の動向」厚生統計協会)
『死んだらいくらかかるか』255頁以下によると、まずホテルで法要をする場合の内訳は次のようである。(出席者50人/ホテルの場合)
(1)会場費=5万円(2時間)
(2)法要用祭壇=遺影を生花で飾る4〜6万円、盛り花は1対1.5万円以上。
(3)案内状の印刷・発送費
印刷費500円(1通)。封筒と宛名筆耕代200〜250円(1通)。郵送料は80円(1通)。
(4)料理=1.3万〜1.5万円(1人)
(5)返礼品(記念品)=2,000円(1人)
(6)献花用の花=350〜500円(1本)。
すべて合計で、90万から120万円以上となる。
次に『大往生の値段』にある、「その後の法事の値段」によると
(1)僧侶のお布施(御礼)納骨、開眼供養を含む=3万〜5万円
(2)寺院での席料、茶菓子等=1万〜2万円
(3)塔婆料(1本)=3千〜5千円
(4)会席料理代等(1人)=5千〜1.5万円
(5)マイクロバス(28人乗り)半日=5万〜十万
(6)参加者への引出物=2千〜3千円
(7)塗位牌(各種サイズ)=4千〜8万円
曹洞宗宝光山梅旧院が建設した「梅旧院分院光明殿」は95年10月にオープンした。鉄筋9階建ての建物で、2,200基分の納骨壇、永代供養壇が納められる。使用料、供養料は1基30万円から360万円までという。(読売新聞95.10.29)
『戦後値段史年表』(朝日新聞社)によると、永代供養料として20年前の1976年には1平米あたり1万2千円であったが、10年前の1986年には3万9千円、昨年の1995年には10万3千円となり、この10年間で約2.6倍となる。(資料提供は東京都建設局のなかの霊園課とある)
1994年の全米葬儀デレクター協会のアンケートによると、葬儀費用の平均は4,409ドル(44万5,300円)。2年前よりおよそ200ドル増えている。
棺 | 2,075ドル | (20万9,500円) |
葬儀企画運営 | 823ドル | (8万3,000円) |
エンバーミング | 290.7ドル | |
遺体安置費用 | 227.6ドル | |
葬儀設備費用 | 221ドル | |
その他の設備 | 180.8ドル | |
その他の準備 | (死化粧、納棺150.2ドル) | |
霊柩車 | 132ドル | |
リムジーン使用料 | 106ドル | |
齋場までの遺体搬送 | 103ドル | |
他の車両 | 74ドル | |
会葬礼状 | 25ドル |
(デレクター94.8)(1ドル=101円/95.10)
1994年のアメリカの1,500社から集められた22万7千件のデータから、アメリカの葬儀料金の概要が発表された。それによると、葬儀費用の平均は総額5,186.24ドル(52万円)という。(フューネラル・モニター6.12)
2,500ドル以下 | 8.9% |
2,500〜3,000ドル | 10.2% |
3,000〜3,500ドル | 14.6% |
3,500〜4,000ドル | 18.8% |
4,000〜4,500ドル | 18.4% |
4,500〜5,000ドル | 14.1% |
5,000〜6,000ドル | 11.9% |
6,000ドル以上 | 3.1% |
ロバート・ニンカー氏の「葬祭業の経済指標」(デレクター95.5月)によると、1993年の平均葬儀金額は5,000ドルであるが、西暦2000年には6,600ドルになると予測している。
アメリカのカルフォルニア州では1965年に散骨が合法化され、最も近い海岸線から3マイル(約5キロ)離れた所からの骨灰の海中投機が許可されている。散骨は初め飛行機によるものが多かったが、現在はボートが一般的。ライセンスをもった葬儀士が布袋に入った灰骨を海に投げる。遺族には生没年月日、まいた日時、場所などが記録された「証明書」が発行される。費用は儀式なしで約3万750円、家族が特定の日を指定すると約44,000円。カルフォルニア州の火葬率は57%と多く、そのうち散骨は25%という。(井上治代ルポ/東京新聞91.5.14)
企画費 | 530ドル(40,000円) |
エンバーミング | 185ドル(14,000円) |
葬儀手配 | 335ドル(25,800円) |
諸道具使用料 | 625ドル(48,000円) |
霊柩車 | 190ドル(14,600円) |
セダン | 150ドル(11,500円) |
棺 | 5,710ドル(43万9,670円) |
合計 | 7,725ドル(59万4,800円) |
(1カナダドル=77円/95.10)(資料=モーチュアリーサイエンス研修1989)
カナダのトロントにあるトロント・トラスト霊園の料金体系(1989年)
埋葬費用 | 325ドル | |
火葬費用 | 190ドル | |
骨壷費用 | 149ドル〜1,442ドル | |
火葬骨の埋葬費用 | 90ドル | |
敷地内での散骨費用 | 55ドル | |
石碑 | 2,700ドル | (平均) |
葬儀費用と飲食代、及びミサ代 | 15万ペソ |
埋葬費 | 3万ペソ |
墓石 | 2万5千ペソ |
5年後の棺出し費用 | 5,000ペソ |
骨箱 | 2万5千ペソ |
合計 | 23万5千ペソ |
これは1989年8月の調査で、6万円強、最低賃金の約7か月分に相当する。
(資料=「アジア墳墓考」頸草書房、248頁)
葬儀費用は平均13,000フラン(約27万円)
サロンの使用料=1日400フラン
司祭に支払う金額=600〜800フラン
(「欧州葬儀ビジネス調査視察」1994より)
(1フラン=21円で換算)
チョーゼン・ヘリテージ社の葬儀費用調査によると、イギリスの1993年の平均葬儀費用は1,080.99ポンド(17.6万円)で、前年度の1,039.88ポンド(16.9万円)から4%上昇。南西部は最も高いエリアで、平均1,181.06ポンド(19万2,500円)である。なお葬儀費用は1990年以来25%高くなっている。(英国葬儀94.4)
イギリスの火葬場の料金は。最も高いダンディー火葬場が245ポンド(4万円)、最低は68ポンド(1.1万円)、平均134.29ポンド(2.2万円)である。(英国葬儀93.8)(1ポンド=163円/95.10)
葬儀明細(1994年1月調べ)
葬儀費用 | 280ポンド |
霊柩車 | 95ポンド |
リムジーン使用料 | 75ポンド |
ベニア棺 | 240ポンド |
遺体搬送 | 70ポンド |
小計 | (760ポンド) |
医師への支払 | 62ポンド |
教会への支払 | 100ポンド |
火葬場費用 | 145ポンド |
生花 | 30ポンド |
小計 | (337ポンド) |
合計 |
1,097ポンド |
死者を海外から移送する費用は大変に高い。海外から英国までの平均額は2,500ポンド(67.5万円)スペイン、ユーゴスラビア、西ドイツから81万円(エンバーミングを含む)。カルフォルニアからでは約73万円。従って旅行者は旅行保険を忘れないこと。(フューネラルサービス90.4)
1990年のイギリスの葬儀費用がリサーチ会社から発表された。それによると埋葬が火葬に比べて約1.3倍コストが高い。その費用は埋葬が920ポンド(24万8,400円)。火葬は712ポンド(19万2,240円)。前回の調査から埋葬が約25%火葬が13%値上がっている。(フューネラルサ−ビス90.4)
ロンドンのシテイ・クルーズ社は、25年前から主にアジア人のために、テームズ川での散骨サービスを行なっている。散骨のチャーター費用は40ポンド(約6,000円)、土日は80ポンド。(フューネラルサービスジャーナル/95.2)
ドイツ
ハンブルグの新聞によると、ドイツの年間死亡者数は90万人。葬儀費用は平均で3,000マルク(約21万6,000円)。それに墓石代や料理費用が加算される。葬儀費用の約半分にあたる棺の平均価格は、1,500から2,500マルク(10万8,000円から18万2,500円)。火葬費用は平均1,200マルク(8万6,400円)。(フューネラルサービスジャーナル95.2月)(1マルク=72円で換算)
内訳は市に支払う費用、墓地への手数料、供花を含む。
火葬の場合、平均4,000から6,000マルク(28〜43万円)
土葬の場合、平均5,000から7,000マルク(36万〜50万円)
(欧州葬儀ビジネス調査視察1994より)
斎場2等 | 2万5千ウォン |
斎場3等 | 2万ウォン |
葬儀設備料 プラス室料(3日間) |
200万〜500万ウォン |
3日間の飲食代 | 300万ウォン |
(*自宅葬では100万〜300万ウォン)
(1ウォン=0.133円で換算)(資料「葬儀」93.7)
葬儀会館費用内訳
保棺(1週間) 2,000元
棺 (賃貸料) 8,000元
(資料/「葬儀」94.3)
葬儀会館にはセット価格がある。費用の半分以上は棺代で、葬儀費用が8,000香港ドル(17,000円)であれば、棺代は4,500〜5,000香港ドルとなる。
洗浄化粧室 | 150Hドル | |
霊安室 | 200Hドル | (1日) |
大ホール:土葬用 | 300Hドル | (時間)(約4,000円) |
火葬用 | 150Hドル | (時間) |
小ホール:土葬用 | 200Hドル | (時間) |
火葬用 | 100Hドル | (時間) |
(1香港ドル=13.46円で換算)(資料=「アジア墳墓考」頸草書房、114頁)
インドでは、死者1人火葬する木材が必要とされ、その価格は約1,500円から1,800円。木材燃料の需要量は毎年1億5,700万トンと見積られているが、供給量は5,800万トン。ガンジス川河畔のバラナシ市も、90年から川岸に電気炉火葬場を2基建設した。しかしヒンズー教徒の多くは「木の炎は魂を清める」として電気炉による火葬を嫌がっている。(朝日95.9.18)
タイの葬儀は年間300億バーツ(1,200億円)の巨大産業になりつつある。統計によるとタイの年間死亡者は28万人であるが、これに毎年6.3万人のエイズ死亡者が加わる。また僧侶、会葬者への謝礼、飲食などで費用のかかる中国式の葬儀費用(1回あたり15万バーツ=約60万円)が葬儀産業の成長につながっているとする。(日経新聞95.10.6夕)
ニュージーランド葬儀社協会によると、毎月100件以上の事前葬儀契約が行なわれているという。ニュージーランドの葬儀費用は埋葬がニュージーランド・ドルで4,000ドル。火葬は3,000ドル。(英フューネラルサービス95.1)
「ニューズウィーク」によると、ロシアでの一般的な葬儀料金が400ルーブル、つまり2カ月分の給料であったが、現在では遺体移送から棺、墓標、埋葬までの料金は2万5千ルーブルとなり、半年分の給料である。この結果、遺体置き場に遺体が放置される件数が増大している。(英フューネラルサービス93.2)