1988.11 |
2月13日 | 本郷新 | (74) | 彫刻家、肺ガン |
3月 2日 | 安井郁 | (72) | 原水禁運動家、膵臓ガン |
4月 1日 | 五味康祐 | (58) | 作家、肺ガン |
4月 8日 | 吉川幸次郎 | (76) | 中国文学研究者、ガン性腹膜炎 |
5月27日 | 唐木順三 | (76) | 評論家、肺ガン |
8月12日 | 立原正秋 | (53) | 作家、食道ガン |
9月20日 | 林家三平 | (54) | 落語家、肝ガン |
11月 7日 | 越路吹雪 | (56) | 歌手、胃ガン |
11月 7日 | スティーブ・マックイーン | (50) | 俳優、肺ガンの首・腹部転移腫瘍手術後の心臓発作 |
12月23日 | 土方定一 | (75) | 美術評論家、結腸ガン |
3月 2日 | 芦原英了 | (74) | 音楽、舞踊評論家、膵臓ガン |
5月 6日 | 山口喜久一郎 | (83) | 元衆議院議長、結腸ガン |
7月 4日 | 木村功 | (58) | 俳優、食道ガン |
7月16日 | 四家文子 | (75) | 声楽家、胃ガン |
12月11日 | 田辺茂一 | (76) | 紀伊国屋書店会長、悪性リンパ腫 |
12月23日 | 浦松佐美太郎 | (80) | 評論家、胃ガン |
12月28日 | 横溝正史 | (79) | 作家、結腸ガン |
1月16日 | 田中二郎 | (75) | 東京大学名誉教授、元最高裁判所判事、胆のうガン |
l月18日 | 三益愛子 | (71) | 女優、膵臓ガン |
7月17日 | 江上不二夫 | (71) | 生化学者、国際生命の起源学会長、肺ガン |
8月29日 | イングリットバーグマン | (67) | 女優、乳ガン |
8月30日 | 内藤泰子 | (49) | カンボジアからの奇蹟の生還者、乳ガン |
9月21日 | 中村翫右衛門 | (81) | 歌舞伎俳優、膵臓ガン |
9月22日 | 佐分利信 | (73) | 俳優、肝臓ガン |
10月26日 | 灰田勝彦 | (71) | 歌手、肝臓ガン |
12月11日 | 伊勢ノ海裕丈 | (64) | 日本相撲協会親方、肺ガン |
8月11日 | 山本薩夫 | (73) | 映画監督、膵臓ガン |
10月 3日 | 花登筐 | (55) | 劇作家、肺ガン |
12月20日 | 武見太郎 | (79) | 日本医師会会長、総胆菅ガンとガン性肪膜炎 |
3月 4日 | 唐牛健太郎 | (46) | 60年安保の全学連委員長、直腸ガン |
5月 5日 | 吉岡隆徳 | (74) | 元陸上世界記録保持者、胃ガン |
9月15日 | 青地晨 | (75) | 評論家、肺ガン |
12月11日 | 中西悟堂 | (89) | 日本野鳥の会会長、肝ガン |
12月20日 | 藤原審爾 | (63) | 作家、肝ガン |
3月30日 | 笠置シズ子 | (70) | 女優、卵巣ガン |
4月 9日 | 東郷文彦 | (69) | 元駐米大使、直腸ガン |
4月12日 | 宮口精二 | (71) | 俳優、肺ガン |
1月21日 | 上方巽 | (57) | 前衛舞踏家、肝硬変と肝ガン |
10月15日 | 安田武 | (63) | 社会評論家、咽頭ガン |
10月14日 | 東京ぼん太 | (47) | タレント.胃ガン |
6月16日 | 鶴田浩二 | (62) | 俳優、肺ガン |
7月 9日 | 千葉敦子 | (46) | ジャーナリスト.乳ガン |
6月16日 | トニー谷 | (69) | ボードビリアン |
7月17日 | 石原裕次郎 | (52) | 俳優、肝ガン |
8月 3日 | 向坂正男 | (72) | 日本エネルギー経済研究所会長、肺ガン |
11月17日 | 川口浩 | (50) | 俳優、食道ガン |
『続・ガン回廊の朝』柳田邦男 雑誌NEXT連載中より
ガンが恐れられている理由の一つには、ガンが大変苦痛を伴うものであるという事実ではないでしょうか。末期ガンの患者の6割近くのが、苦痛を訴えます。しかし患者にモルヒネなどの鎮痛剤を使用することで、8割位の除痛が出来るといわれています。治る見込のない患者の苦痛を緩和し、普通人と同様の思考、読書、書きものができる様にすることが、現在の医学の方向であると思われます。
昭和62年の人口動態統計によると、死因のトップはガンで、20万人に迫る19万9千人で、急激な伸びを示しています。ちなみに61年度のガン死亡者数は19万1千人。死因の第2位は心臓病の14万4千人、3位は脳卒中の12万4千人となっています。
将来この数字がどのようになっていくかの予想が発表されています。同統計によると、日本人のガン患者数は1985年が総数28万2千人で、それから15年後の西暦2000年には、約2倍の48万人と予想されています。したがって入院用のベット数が、大きく不足するなど、さまざまな問題に取り組まねばならなくなります。
ガンの原因となるといわれている発ガン性物質には、土壌、水、石油、油、排気ガス.タバコ.魚や肉の焼焦げなどにふくまれているベンピッレンがあります。過去60年の間に5,000の科学物質のチェックが行なわれ、その内約半分弱の2,000に発ガン性の疑いがあるとされました。
タバコが肺ガンの原因であるということが明らかになったのは、1960年代にはいってからのことです。タバコのタールに含まれる科学物質には、ベンピッレン、ジベンツアントラセンなどの変異原物質が多く含まれていることが明らかになったからです。
また喫煙開始年齢が早いほど肺ガンになりやすいことがわかっています。例えば未成年のときに吸い始めると、吸わない人の約6倍、35歳のときから吸い始めると、4倍の率で、煙草を吸わない人よりも肺ガン率は高くなっています。
喫煙者はガンにかかりやすいということは今では常識となっていますが、それと反対に野菜を毎日食べている人に、ガンが少ないという結果が出ています。一番ガンにかかりやすい人は、たばこを毎日喫っている人で、野菜を食べない人ということになります。
またガン患者の調査で、ガン患者の3分の1以上の人が、幼児期に両親や愛した人と死に別れたり、生き別れした場合が多いようです。幼児期に体験した辛い思い出が、長く心のなかに蔭を落していたというのでしょうか。またガン患者の性格は、非常にきまじめな働き屋で、規則をよく守るが、遊びが苦手という人が多いといいます。人前では自分の感情を圧し殺したり、ストレスの発散の仕方を知らない人に多いといいます。
ガンの部位別死亡数を見ると、男性では特に肝臓ガンの増加が目立ちます。75年の調べでは6,795人であったものが、10年後の85年には約2倍の14,000人に増加しています。一番数の多い胃ガンは、75年の30,400人から10年後の85年では30,100人とほぼ一定であることがわかります。女性の場合には乳ガンと卵巣ガンが、それぞれ10年前と比較して1.51倍、1.78倍と増加しています。
日本人のガン死亡者のおよそ3割であるほぼ5万人が、毎年胃ガンで亡くなっています。これは塩分の多い食生活と関係があるといわれています。末期の胃ガンでの5年間生存率は1割に過ぎませんが、早期胃ガンの場合には97.7%の好成績があります。こうしたことからガンの早期発見が叫ばれているのです。第2位の肺ガン胃ガンの次に多いのが肺ガン。気管や気管支にできるガンとタバコの関係は明白で、1日の喫煙本数x喫煙年数が、600以上の人の8人に1人が肺ガンといわれます。また診断にはX線写真や気管支ファイバースコープが使われます。
日本では胃ガン、肺ガンに続いて死亡数の多い肝臓ガンは、昭和60年で19,871人でした。肝臓ガンの8割が肝硬変を併発しており、手術が困難です。肝硬変やB型肝炎ウイルスによる慢性肝炎の人は、肝臓ガンにかかりやすく、肝硬変の4人に1人はガンに進行するといわれています。
昭和60年の年間死亡者数は1,0441人。腹の上部の不快感や鈍痛といった初期症状が、胃の病気の症状と似ており、かなり進行するまで無症状の患者が多いため、早期発見を遅らせています。手術後の平均生存日数は5か月前後、50〜60歳代の人に多く見られます。
死亡数がこの20数年で2.5倍に増加したガンで、原因は脂肪の多い食事や、繊維分の少ない加工食品を摂取することで、便秘傾向となり、それが、腸ガン増加を促進しているといわれています。腸のガンのうち直腸ガンが55%と1番多く、S状結腸と合わせると8割を占めます。以前は直腸ガンの手術を受けた人の7割は人工肛門を作っていましたが、現在では早期発見と、技術の進歩で4割に減っています。
乳腺に発生するガンで、症状は乳腺部に硬いしこりが出来ます。進行すると脇の下などのリンパ腺にしこりが出来るようになります。年齢は40〜50歳代に多く見られます。
患者に、光に感受性の強いヘマトポルフィリン誘導体を注射します。そのうえでレーザーを照射すると、そのエネルギーがガン細胞にのみに集中し、酸化作用が起こりガン細胞だけを破壊するという原理です。早期肺ガンや胃ガンの治療に用いられています。
ガンがある大きさになっている場合、まず出来る限りガンを摘除することが優先されます。早期胃ガンの場合には、治療後の5年生存率は97%を超えています。ガンの摘除に際しては、ガンが認められる臓器を摘除するだけでなく、さらには転移の可能性のあるリンパ節をかきだす作業が行なわれます。
ガン細胞に放射線を放射して増殖を阻止するのが目的です。治療にあたっては、正常な組織も放射線障害を受けるので、正常な組織をいかに被害を少なくするのが課題となっています。
抗ガン剤は増殖作用の速いガンほど効きやすい反面、増殖速度が速い正常な骨髄管細胞を侵すという副作用を持っています。そのため抗ガン剤の投与間隔、期間などにきめの細かい注意が必要とされます。
乳ガンや甲状腺ガンならば触って分かります。子宮ガンですと性器出血という形で早期に症状が出てきます。しかし、大腸ガンやすい臓ガンの場合は、症状がありません。全然症状がありませんから、みつかったときには手術が出来ないほどに進行していることがあります。ガンの集団検診集団検診は症状のない不特定多数の人を対象にするもので、診断技術も検査部位もおのずから限定されます。保険所などが実施しているガンの集団検診は、胃ガン、肺ガン、子宮ガン、乳ガンが対象ですが、一般には男性は40歳から、女性は35歳からが受診年齢となっています。
宮城県で1960年から20年間に行なってきた診断では、約148万人が検査を受け、5OO人に1人の2,735例の胃ガンが発見されています。
財団法人がん研究振興財団が国立がんセンターの監修の下で、一般向けのガン予防のガイドラインを発表しています。この12か条を実施すれば、ガンの約60%は防げるといわれています。
(1) 偏食しないでバランスのとれた栄養をとります。
(2) 同じ食品を繰り返し食べない。ワラビには微量の発ガン物質が含まれているが、たまに取るくらいでは心配ありません。
(3) 食べ過ぎは避ける。ネズミの実験で、好きなだけ食べたグループのほうが高い発ガン率を示しています。
(4) 深酒はしない。フランスのワインの消費量の高い地域に食道ガンが多いという報告があります。
(5) 喫煙は少なくする。
(6) ビタミンA、C、Eと繊維質のものをとる。
(7) 塩辛いもの、熱いものはとらない。塩辛いものは胃ガンの発生と関係があります。
(8) 肉や魚の焦げた部分を食べない。焦げ物質、トリプP1に発ガン性があります。
(9) かびの生えたものは食べない。ピーナッツや輸入トウモロコシなどに生えるアラドキシンは、少量でガンを発生させます。
(10) 過度に日光に当らない。紫外線に長時間あたると、細胞の遺伝子が突然変異を起こす危険があります。
(11) 適度のスボーツをする。疲労とストレスは健康の敵です。
(12) 身体を清潔に保つ。女性に最も多い子宮頸ガンを防ぐのがねらいです。
末期ガンの患者に医師は「告知」すべきかということが問題となっています。九大医学部心療内科の調査では、「ガンであることは隠すが、重い病気だと告げる」が最も多く医師33.9%、看護婦15.6%、一般人19.4%となっています。病名の告知が義務となっているアメリカに比較すると、少しずつ変化はみられますが、まだ知らせないというのが一般的といえるでしょう。
河野博臣の『ガンの人間学』のなかで、ガン告知をするうえでの注意を語っています。
イ.年齢、幼児、老人、成人
ロ.知能、教育による受用能力
ハ.性格や情緒の安定度
ニ.家庭や友人の援助の有無
ホ.本人が本当に知りたいのか
ヘ.今までの生き方
ト.信仰の問題
イ.息者の肉体苦痛だけでなく、精神的苦しみを引受ける人格的な力
ロ.医師はしっかりした死生観を持っているか
ハ.援助チーム(看護婦、カウンセラー)を持っているか
二.息者にわかりやすい言葉や、信頼関係を持って無言で気持を伝え得るか
病気の本質を受け入れる覚悟や精神的安定が出来る状態まで待つべきで、告げる時期として
イ.倹査後に病名が判明したとき
ロ.術後、心身ともに病状が安定したとき
ハ.退院するとき
ニ.「再発のとき
ホ.末期になってしまったとき
イ.医師が患者に直接告げる
ロ.医師が、家族や友人に告げ、患者には、家族や友人を通して語っていただく。
アメリカにおいても、1960年以前の段階では、ガンは患者に告げないというのが主流でした。1961年の調査では、医師219名の90%がガンの告知はしないと答えています。しかし60年初頭から、患者は自分の生命、健康について、どのような選択をするかを自分で決定する権利(自己決定権)があるとした法理論が広まりました。そのため医師が、注射や手術などを行なう前に、医師がその目的、予想される治療結果と副作用などについて説明して、患者の承諾を得ておかなければならないというものです。ガンの場合にも、それを告げなければ医師の損害賠償責任が課せられることになり、ガン告知を促す大きな要因となったのです。
ガン細胞ができ、症状が出て臨床的に発見されるまでガン細胞が育つまでに、10年、12年、場合によっては30年以上の時間がかかることが分かってきました。体内に異常な細胞が生じると、生体の免疫機構がそれを排除しようと働きます。しかLそれでもなお、排除し切れない細胞が、ガン細胞は育っていくわけです。
ガンの発生率は高齢者ほど高くなるといわれます。それは高齢者では免疫機構が低下して、抵抗力がなくなること、100才以上の人を解剖してみると、ほとんどの人が潜在的なガンであったという報告があります。
最近、ガンの医学的治療と並行してイメージ療法を行ない、非常に効果があることが、カール・サイモントン著の『がんのセルフコントロール』(創元社)に紹介されています。博士は61才の咽喉ガン患者にイメージ療法を試み、5年生存のチャンスが5%の患者が、イメージ療法を続けてから2か月目には、ガン細胞が消滅するまでになりました。この成果を受け、彼は生存可能期間平均12か月の患者150名を、4年間にわたって治療した結果、ガンが消滅した者14名、退縮した者12名、安定した者17名、死亡した者でも、約1倍以上生きながらえるという素晴らしい結果を得ました。
サイモントン博士は、ガンの発生には次の5つの要因があると述べています。
1. 幼年期の異常な体験が、大人になっても作用する。
2. 強いストレスの積みかさね。
3. 解決不能な問題がストレスとなる。
4. 差し当っての問題に、敗北主義者となる。
5. 問題に背を向ける。
ガンが発生するプロセスを、逆に制圧に利用しようと、サイモントン博士があみだしたものです。
1. 患者が現在行なわれている治療と、体内の防衛機能を信頼すること。
2. 健康を回復することを信じ、生きることに希望をもちます。
3. こうした考えが大脳に記録されます。
4. 視床下部に大脳からイメージが送られます。
5. 抑制されていた免疫組織を復活させ、異常細胞に対する防衛機能を復活させます。
6. 異常細胞の減少と、ガン細胞の退行。
イメージ療法は、まず身体のリラックスから入ります。1回10分から15分、1日3回行なうのが理想です。なおイメージする内容をテープにふき込んで聞いてもよいでしょう。
なお現在(1988年)、日本語版テープがライフマネジメント研究所長の近藤裕氏の監修で「創元社」から販売されています。
創元社(http://www.sogensha.co.jp/) |