生命保険の加入が義務づけられているのを知ったのは、ローンの手続きが始まってから初めて知りました。
実は、主人は軽い糖尿病でしたので保険に入れなければ、マンションはあきらめようとも相談していました。その心配もなく、軽度のため少しだけ割増の掛け金を支払うだけで加入でき、以外と簡単なんだと軽く思っていたのは、ほんの数日。
それからは、引越や家具、新しい調度品選びなど楽しいことばかりが続き、引越完了。
友達に見に来てほしく花を買ったり、小さな絵を飾ったり、何枚も転居案内のハガキを書きました。
突然の不幸は、電話で知らされました。会社から「ご主人が倒れて病院へ運ばれた」との事。取るものも取りあえず、知らされた病院に駆けつけたとき、既に主人は危篤状態。一体何が何だか分からず、本当にここに寝ているのが主人なのか疑いたくなる気持ちでした。そして、あっという間に帰らぬ人となりました。
死因は食堂静脈瘤破裂。どんな病気かも分からないまま突然、崖からつき落とされたようなめまいを感じていました。でも私の中で、一筋のくもの糸のように手を差し出しているような、何かがありました。まさに、先日、加入した生命保険です。マンションのローンは保険金で返済され、私はローンを支払っていくという重荷からは救われているという安心がありました。
悲劇はその後に起こりました。主人は生命保険加入より2ヶ月前にあった、会社の健康診断で肝臓の精密検査を受けていました。それも、2度。糖尿病よりずっと深刻なほど状態は悪かったようです。薬も飲んでいましたが糖尿病の薬ではなくて肝臓の薬だったようです。
それでも食堂静脈瘤破裂と肝臓は関係ないと思いこんでいましたが、まさに深い関係があることが分かりました。まさに一枚づつ疑問の皮がはがれていくようでした。
生命保険会社の方が悲痛な顔で説明されました。保険金のお支払は出来かねます。理由は告知義務違反です。保険加入前に健康診断で異常を指摘され、精密検査の結果通院、投薬を受けていたことを保険加入時に告知しておらず、そのことを、直接の死因として亡くなったケースですので無理との事。
私に心配させまいと肝臓のことを話さなかった主人。まさにそう言う人でした。でもそのおかげで、私は始まったばかりの30年3,000万円のローンの返済を続けなければなりません。私の心配症と主人の思いやりが、裏目に出たように思えて、先のことを考えると今でも涙がとまりません。