私の弟は14年前、春の彼岸の中日、春山山行で富士山から1500メートル程滑落し、25歳で亡くなりました。大学卒業後3年目でした。十三回忌も終え、私もその間に結婚し、2人の息子の世話などで思いだすことも時折となっていた昨年3月21日、弟の命日に実家の父宛に荷物が届いたそうです。差出人に心当りもなく、皆で恐る恐る開いてみると、一通の手紙と高価な感じの(と母が言うのですが)お線香が入っていたそうです。
文面によると弟が遭難した時、近くを登山していて捜索を手伝って下さった方とのことでした。私共は忘れてしまっていましたが、その時気持ばかりの御礼を差し上げたそうで、その方によると御礼も言わないまま毎年命日に思い出して30歳をとっくに過ぎ、人の心の痛みも少しわかりかけ、今でも遅くないと思って、気持だけだが線香を手向けてくれたと、筆不精を詫びながら書いてあったとのことでした。
その時、本当になんて幸せな弟だろう。こんなにも気付かって下った方がいらっしやるとは涙が出て止まりませんでした。今でも海外の山行へ出かけていらして、母が御礼の電話をかけた時もヨーロッパの方へお出かけとのことでした。山行きの安全を心からお祈りしています。