5年前亡くなった陽気な祖父のお葬式。お寺で大きなスクリーンを貼り写真や8ミリなど、祖父の経歴、私生活をドラマ風にみせてくれた。お酒落で、にぎやかな事が大好き。私達孫も、弔問客も、その在りし日の姿を観て、思わず微笑んでしまったものだ。涙が大嫌いな祖父にふさわしい思い出深い告別式だった。
それから3年後、父が亡くなった時は、町内の風習にならい、市役所の葬儀係でとりおこなって貰ったが、ひとつ気になる事があった。告別式が友引にかかる為、父にお人形を抱かせるというものだ。友をひく、という厄除いのため人形を連れてゆく、という意味らしい。
これも土地の風習だろうが、遠方から来る弔問客に、まゆをひそめられないだろうか。何より父が、御年輩の知人にでも何かあった時、あの世にても心苦しく思うのではないか。私としては、背が高く、お酒落で見栄っぱり、まだ60で現役の父が、遺体になったとはいえ、お人形を抱いている姿を想像すると可哀想でたまらない。もっと老若男女誰にでも通用し、誰もが納得する形で、友引に告別式をとりおこなう事はできないものだろうか。
私はやはり、友引の告別式は断り、別の日にしてもらた。
小さな女の子や、かわいいおばあさんでもない現役の父に、お人形を抱かせていかなかった事だけで、私はほっとしている。父も多分暑い盛りで、3日も寝かせて、しんどかっただろうけれど、笑ってくれているだろうと信じている。