宗派を聞き違えた葬儀社

[男性 65歳]

イラスト  長年連れ添った妻を、亡くしたときのことだった。
 昨年9月はじめ、妻は眼底動脈瘤という難病で「手術以外に助かる見込がない」と医師から宣告された。妻は悲壮な覚悟で手術台に上がったが、不幸にも手術中に亡くなった。
 早く元気になって帰りたがっていたわが家で、葬儀を行なうことになり、親戚の者が、中心になって、葬儀社と相談しながら、準備を進めていた。祭壇が半ば出来上がったのを見ると、わが家は真言宗であるのに、祭壇のつくり方が、どうも違うような気がして、葬儀社の者に確かめると、真宗のものと判った。
 親戚の者は「真言宗と言ったはずだ」と言い、一方、葬儀社側は「真宗と聞いた」と言い張る。どさくさの中で行なわれた相談で、どちらに責任があるのか判らず、水かけ論に終り、祭壇をつくり直すことになった。それに手間取り、葬儀は予定より大幅に遅れ、午前中に終わるものが、午後にまで、ずれこんでしまった。このため、僧侶は「他所の法要に行く時間が狂ってしまった」とご機嫌ななめ。
 予定になかった昼食を、皆に出さねばならなくなり、余計な支出になるし、身内の者はてんてこ舞い。このときの体験から、葬儀を行なうときには、先ず第一に信頼のおける葬儀社を選ぶ。第二に葬儀にかける費用の額を決め、その範囲内で葬儀を行なえるよう、葬儀社と十分話し合うこと。そうすれば、相手は親切に教えてくれ、支障なくことが、運ぶということを、申し上げたい。私も、こうしておけば、宗派の間違いもなく後味の悪い思いをしなくてもよかったのにと、つくづく思っている。


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