恥をかいたお布施

[男性 60歳]

イラスト  父が急死したのは私が28歳の時。突然の葬儀でなにも知らない。親類の一人に相談したところ「○○円ぐらい」という。日頃から話に聞いていた額に比べると安すぎる。と思ったが安いにこした事はないとその金額を包む。その後に続く法要の、お布施も合わせる。自宅の時には、それ程感じなかったが、別の親類の宅の法事に行くと読経の時間が違う。当方は極端に短い。半分位の時間である。戒名料、お布施の金額が気になり、他の事情の詳しい人にたずねるとケタ違いであった。
 改めて教えてくれた親類に問いただすと、「本当は知らなかった」と言う。旅のドライブ中、道をたずねると逆の方向だった経験がよくあるが、大抵の場合、教える本人もよく知らないに似ている。わからない時には、客観的に見て内部事情に詳しい人に尋ねるのが最良の方法である。以後、私は同僚の教員兼僧侶に尋ねる事にした。体験的に言えば、いくら同僚でも金額の中味までは、言いにくそうである。だから、「一般的に言って、社会標準では幾らだ?」と言った調子で尋ねていた。
 ところが驚いた事には、ある親類の葬儀に行った時、その地では僧侶が戒名料を明確に提示してくれると言う。土地によって大きい差がある事を知らされた。そうするとその土地、土地のしきたりにも気を配る必要がある。結局、今自分の住む土地でのしきたりの中で、自分の考えに基づく葬儀のイメージを構築しておく事が大切である。
 現在の自分の力から見た適切な戒名料、お布施。シンプルな簡素化された中にも、厳粛な重厚さのただよう葬儀の方法等、である。


Copyright (C) SEKISE, Inc.