無理がたたって肺炎を起して入院した3日目のことです。私の病室はナースステ−ションに一番近い所、いわゆる重病の方が入る所でした。ベッドが空くまでの5日間ということだったのですが、その5日間に私は2人の方の死とカーテンごしに直面したのでした。
最初の方は半年以上も入院されていて、私が来た時は、もう何もわからないような状態で、家族の方もさすがに疲れておられました。奥様と娘さんとの交代の看病でしたが、娘さんは昼は看病、夜は仕事というハードな生活だったようです。
もちろん、ある程度の覚悟はできていたと思いますが、亡くなられた時のあの悲しそうな声。自分の生活も犠牲にして過した半年。これで楽になるだろうに、それでも父親の心臓を、何度も何度も叩いて、名前を何度も何度も呼びつづけて…。思わず涙をそそられてしまいました。それでいて母親を庇いながら荷物の整理をして、これからの自分のとるべき行動を考えているような姿勢にあらためて感心しました。
2人目の方は、急激に悪化したらしく、私たちの部屋にきて2日もたたないうちに亡くなりました。あっという間の出来事でしたが、私が胸をうたれたのは奥様の言葉です。「お騒がせしました。迷惑をかけました。あなたも早くよくなってね。」涙いっぱいの目でそういわれた時は、さすがに言葉がでませんでした。こういう時に他の人を気遣うなんて私にできるだろうか…。
今回の出来事で一番強く感じたのは、こういう時こそ毅然とした態度で接さなければならないということです。今はまだ、入院中の身ですけど、ほんの何日という短い間で感じた事を頭の隅にでも残しておいて、これからの生活に生かそうと思っています。