2000.11
葬儀の事前設計

葬儀をあらかじめ設計している人は少ない。それには3つの理由があげられます。

1. 葬儀を前もって考えることは縁起が悪い。
2. 葬儀はどれも同じなので考えるまでもない。
3. 前もって考えたとしても、遺族がそれを実行してくれる保証はない。

こうした理由があってか、これまでは事前設計をする人はいませんでした。 しかし最近では、少子化によって自分の死は自分で準備する必要から、葬儀を含め死の事前設計をする人が増えてきました。


葬儀の事前設計

葬儀の事前設計には、本人が元気なうちに自分の葬儀をあらかじめ設計しておくものと、死が確実になった時点で相談するものがあります。事前設計には多くの異なった選択肢がありますが、ここでは、一般的な選択の概要と、事前設計がもたらす利益を示します。

事前設計をするメリットと注意点

1.死の負担を軽減する

家族の死は、我々が体験する最も心理的に苦しいものの一つです。事前に葬儀を設計しておけば、死が実際に訪れた際に、家族が深い悲しみの中で難しい選択をしなくてもすみます。事前設計は、本人が適切な判断力を持っている時に行われる必要があります。またそれは、その決定を配偶者や家族、他の重要な人々と相談することができれば理想的です。

2.保証される個人の選択

死亡した時点で、葬儀の打ち合わせをするときには、家族は故人が何をしてほしいか知らないために、彼ら自身の好みで選ぶ傾向にあります。そのため故人が望んでいた形と違うことがあります。

3.個人の情報と必要書類

あらかじめ葬儀の事前設計をした書類を作ってあっても、遺族がその場所を知らないこともあります。そのため、個人情報は葬儀社に登録しておけば間違いないでしょう。こうしておけば、遺族は取り決めを記した書類をイライラして捜すことが防げます。

4.費用を準備できる

葬儀の設計を前もって行っておけば、費用はより少なくてすみます。それは柔軟な支払い方法が利用できるからです。事前に費用が支払ってあれば、葬儀社では預かった資金を安全に投資するので、事前設計した葬儀はより低予算が可能となります。

 

サービス内容を選ぶ

自分自身の死について考えることは簡単ではありません。死の時点で何もわからない遺族が、取り決めることはさらに大変です。しかし前もって事前設計してあれば、大変有益でしょう。事前設計によって、残された遺族への精神的、金銭的負担を軽減することができます。

身内がいない人は、自分の葬儀をどうしたらよいか葬儀は家族や喪主がいれば、葬儀社に連絡すればなんとか出来ます。しかし伴侶もいない、子供もいない。兄弟は離ればなれであれば、前もって葬儀を依頼しておくわけにはいきません。そんな場合、自分の葬儀をどのように考えたらよいでしょう。これまでの伝統的葬儀は、形骸化しているといわれていますが、多くのノウハウがつまっており、無視できない点があります。

ここでの葬儀の事前設計では、遺族のニーズや実際に葬儀をしていくうえで、必要なことがらを加味しながら作成していく方法を示しています。

以下の5つの質問に答えるだけで、葬儀にはどんな準備が必要かが理解できます。

事前設計のための質問表

1.葬儀に誰を呼びますか?
2. 式典をどう組み立てますか?
3.何を用意しておきますか?
4.費用はどれくらい用意しておきますか?
5.どのように遺族に希望を伝えますか?

1.葬儀に誰を呼びますか?

葬儀を行うためにはまず喪主が必要です。次に葬儀社に連絡する人が必要です。葬儀社さえ決まれば、式典は葬儀社がやってくれますので心配いりません。
次に葬儀にだれを呼ぶかを考えたいものです。たとえ身内がいないとしても、友人のなかには、「一言お別れをいいたい」という人も少なくありません。

そこで次の質問に答えて下さい。

◆葬儀に誰を呼びますか?
□親戚
□隣近所の人
□故人の職場や趣味の関係者

これらの人数を合計します。

2.式典をどう組み立てますか?

式典は、まず式の方式を決める必要があります。
そこで次の質問に答えて下さい。

◆式典をどう組み立てたいですか?
□会葬者は何人くらい来てほしいですか?
□式場はどこがいいですか?
□喪主は誰にしてもらいたいですか?
□式は仏式ですか、それとも希望がありますか?

3.何を用意しておきますか?

葬儀には葬儀社が用意するものと、喪家側で用意するものとがあります。
葬儀で喪家は何をしたらよいかは、葬儀社が全部教えてくれるので、そのとき決めても遅くありませんが、生前に本人が決めてあれば助かることがあります。

◆生前に決めておきたいこと
□故人の写真(遺影写真として使う)
□寺院のお願い(つきあいのある寺院がない場合、葬儀社に紹介してもらう)
□戒名をどうするか

4.葬儀費用はどれくらい用意しておきますか?

費用には、葬儀社に払うもの、葬儀社を通して払うもの、葬儀社以外に支払うものがあります。次のなかで必要になるであろうものを確認しておきます。

◆一般的な葬儀に費用としてふくまれているもの
□会場費用(自宅や寺院、葬儀会館により費用が異なる)
□祭壇費用(花祭壇では花の種類によって異なる)
□棺と仏衣などの費用
□霊きゅう車
□タクシー(火葬場に行く人数)
□チップ
□料理(通夜、初七日法要)
□戒名料
□お布施(脇僧数)

以上、おおまかに葬儀に対する方針を決定していきます。どんな棺や祭壇を選択しておくかということは、時代や葬儀社によって扱う商品が異なってきますので、そうした細かい指示は実際の葬儀(アットニード)の段階でも遅くはないでしょう。

5.どのように遺族に希望を伝えますか?

葬儀の事前設計が出来ても、それが書類のなかにしまわれてしまっては、何にもなりません。そのため、あらかじめ遺族に渡しておくか、信頼できる友人にお願いしておく必要があります。しかしこれは事前設計であって事前契約でありませんので、どの葬儀社に依頼するかは遺族の判断にまかせられることになります。
また互助会や会員制度のようなシステムも多くありますが、葬儀内容までもあらかじめ決めておくということは少ないようです。


アットニード(死亡後対応)

アットニードとは、死が発生してから、喪主を中心に葬儀についての準備を始めることをさします。そのため遺族は、多くの事柄を決定していくための情報が必要となります。そのためここでは、あらかじめ葬儀のプロセスを紹介して、何をしていったらいいかを把握していただきます。
遺族が、深い悲しみの中で難しい選択を迫られることを防ぐためには、葬儀スケジュールを参照してもらうことが必要でしょう。

遺族のための葬儀スケジュール(例)

1.病院で死亡した場合にすること

(1)親戚等に電話で死亡を連絡します。
(2)担当医から死亡診断書を受け取ります。
(3)ご遺体を移送するために、葬儀社等に車の手配をします。
(4)移送車が到着するまでの間、病室のあと片付けをすませます。
(5)遺体を車に乗せるのを立会い、自宅まで案内をします。

2.自宅で死亡した場合

(1)かかりつけの病院に連絡し、死亡を確認していただきます。
(2)葬儀社に電話し、葬儀の依頼をします。

3.遺体が自宅に安置されたら、寺院に電話で通夜・葬儀の読経をお願いします。

4.葬儀社の担当者の指示に従って葬儀内容を決定します。

 

■決定事項

ここではあらかじめ、事前設計がなされていない場合を想定しています。

(1)通夜・葬儀の場所
会葬者の人数、祭壇設置場所、霊柩車の駐車場を考慮します。

(2)葬儀の日時
友引、ご住職の予定、火葬場の予定、家族、親戚の到着時刻を考慮します。

(3)僧侶関係
菩提寺の有無、僧侶の人数、お布施の金額、戒名(法名)

(4)会葬者人数の把握
会葬者数によって通夜のもてなし、会葬御礼品の数が異なります。

(5)予算
祭壇、棺、会葬者のおもてなし、会場使用料などです。

(6)スケジュール
通夜、葬儀・告別式、初七日、精進落としの順で行ないます。

(7)役割の決定
世話役、受付係の決定。会葬者の記録が大事な仕事です。

(8)ご宿泊
遠方からみえる方へのご確認。

(9)焼香順位
焼香順位は名簿から抜けることなく列記します。また読み間違いのないようにふりがなをつけます。

(10)各種名簿作成
・焼香順位表に会社名・肩書き・氏名を記入します。
・弔電順位表に社名・肩書き・氏名を記入します。
・火葬参加者名簿には参加者人数、タクシー台数、自家用車台数を記入します。

(11)必要項目のまとめ
故人氏名、死亡年月日、死亡場所、生年月日、葬儀場所、会場住所、電話、寺院名、宗派、電話、喪主名、間柄、葬儀委員長

・通夜
弔問予定者数、通夜食事数、注文先、通夜受付

・葬儀当日
会葬予定者数、朝食数、注文先、昼食数、注文先、初七日料理数、配達時間

・葬儀関連連絡先
葬儀社、タクシー、寺院、警察、料理屋、火葬場、町内会長

■葬儀の進行

葬儀は地域の慣習やその規模によって多少変化しますが、概ね次のように進行します。(葬儀の前に遺体を火葬にする地域も珍らしくありません)

1.お通夜

(1)弔問の受付を行います。
(2)時間になると喪主、遺族、参列者着席し、僧侶が読経、焼香を行います。
(3)参列者が焼香を行います。
(4)喪主が挨拶を述べます。
(5)通夜ぶるまいとして、酒食の接待を行います。
(6)祭壇の線香やろうそくを絶やさないように近親者でお守りします。

2.葬儀・告別式

(1)会葬者の受付を行います。
(2)喪主、遺族、参列者着席します。
(3)僧侶が読経を行います。
(4)弔辞、弔電を披露します。
(5)僧侶、喪主、遺族の順で焼香を行います。
(6)参列者が焼香を行います。
(7)故人と最後のお別れをします。
(8)出棺前に、喪主又は親戚代表が挨拶を述べます。
(9)霊きゅう車は火葬場に向います。

■火葬

(1)火葬場の受付で埋火葬許可証を提示します。
(2)棺を炉前に安置し、焼香をします。
(3)棺に点火し、遺骨になる間待機します。
(4)近親者にて、遺骨を骨壷に収めます。
(5)自宅に帰り、遺骨を飾り壇に載せます。
火葬場に持参するものに、埋火葬許可証、骨壷、白木の位牌、遺影があります。

■初七日法要

初七日法要は死亡日から七日目に行なうのが正式ですが、お葬式当日にお骨が帰ってきてから行なうことが多くなりました。初七日法要のあと、葬儀が無事終了したことを感謝して、精進落としの宴を開きます。


サービス・アイテムの選択

葬儀社では、葬儀に必要なサービスアイテムを数多く用意しています。葬儀社の多くは利用者の便宜を考え、セット料金となっています。ただし希望があれば個別に選択してもらうことも可能です。

祭壇の選択=伝統的な葬儀を行う場合には、まず祭壇を選びます。祭壇は、木製の宗教的な祭壇を中心としたものと、生花を中心としたものがあります。

棺の選択=葬儀を行う場合には棺を選択します。棺は木製で彫刻のあるものと彫刻のないものがあり、彫刻のある棺は、ない棺より高価です。

■葬儀役割表

葬儀は会葬者が多くなるほど、それに関わるスタッフが多くなります。
次は葬儀に欠かせない役割です。

1.総括係

準備= 案内状・会葬礼状・当日返し礼状の発注、席順の決定、弔辞依頼、弔電整理、式場の打合せ、役割分担、スケジュール表の作成、新聞広告、お礼状手配
食事= 遺族・親族・係員の食事の手配
および備品の手配
会計= 葬儀関係費用の管理、当日の出納

2.送迎係

送迎= 遺族・親族・来賓・関係者・係員の送迎
寺院= 導師への挨拶・打合せ、伴僧の挨拶・送迎

3.接待係

接待  = 寺院・楽人・遺族・親族・来賓の接待
受付  = 来賓・一般会葬者の受付
(芳名録に記帳の依頼)
香典・供花・供物の拝辞の確認
礼状  = 会葬者に御供養品の配付、出納
クローク= 会葬者の携帯品預り

4.式場係

誘導= 来賓の誘導
整理= 式場内外の整理、会葬者の誘導
案内= 式場迄の各交差点にて会葬者(車)の誘導
駐車場= 参列者の車両の誘導整理、所轄署への届出
設備= 式場内外の諸設備の設営、諸備品の準備

5.記録係

写真・ビデオ等の撮影・記録

 

葬儀記録帳

遺族にとって大変重要なのが葬儀記録帳です。葬儀が終わたあとに、遺族に渡されるもので、これによって葬儀社が遺族のために何をしたかが一覧できます。また次に葬儀をするような場合でも、これさえあれば、何を準備したらよいかが参考にすることが出来ます。次にその目次を紹介して内容の一旦を理解してもらいます。

葬儀記録帳の目次と記載例

 戒名
 俗名
 行年       歳
 死亡年月日 平成 年 月 日午後 時 分
 死亡場所

 一、葬儀次第

 二、故人年譜

 三、故人を偲んで

 四、文書内容
  □死亡通知状
  □会葬御礼状
  □忌明け法要挨拶状

 五、各種名簿
  □指名焼香名簿 
  □弔電者名簿
  □供物供花名簿
  □会葬者名簿
  □香奠額控

 六、葬儀費用記録

 葬儀次第(一例)
 一、納棺    月 日   午後 時 分

 一、親族通夜  月 日   午後 時 分

 一、本通夜   月 日   午後 時 分

 一、葬儀    月 日   午前 時 分

   葬儀係員式場集合    午前 時 分
   遺族・親族式場集合   午前 時 分
   遺族・親族の写真撮影  午前 時 分
   遺族・親族入場、着座  午前 時 分
   来賓入場、着座
   導師入場、着座     午前 時 分

   葬儀式開始(司会者、開式の辞)
   読経、導師引導、導師焼香
   弔辞・弔電披露、読経
   遺族・近親者・親族・来賓焼香
   葬儀式終了       午前 時 分
   出棺の挨拶(喪主)   
   出棺式         午後 時 分

   火葬場着        午後 時 分
   火葬(約1時間分〜2時間)
   拾骨          午後 時 分
   還骨勤行        午後 時 分
   初七日法要       午後 時 分
   お斎          午後 時 分
 
 一、七七日  
   忌明け法要  月  日
       午後  時  分 於自宅

 一、納骨   月  日
       午前  時  分 於○○寺
               (以下略)
Copyright (C) 2000 SEKISE, Inc.