1999.06 |
死や葬儀の周辺で何が起こっているかを知る手がかりとなるのは、まず関連データを収集することから始まる。データは最新のものが価値が高いことはもちろんだが、どのように変化しているかがわかれば、今後の動きを知るための手がかりともなる。そこで今回は最近の死とシルバー関係のデータを年代順に並べてみた。
1992年〜98年の死亡者数は徐々に増大
1992年の死亡者数が85万人を超えた。そのうち65才以上の死亡者は75%で、約63万人。男女別では男性318,724人、女性319,767人と大きな違いはない。高齢者は女性の数が多い割には、死亡数はほぼ同じというのは興味深い。
その後の推移をみると、93年は878,532人、94年は875,933人。95年は922,239人。96年の死亡者総数は896,211人で、この年は前年より約26,000人減少した。97年の死亡者数は913,402人でわずかに増加というべきか。1年のなかでも寒い月は死亡者が多いが、97年の統計では、一番死亡者の多い月は1月、一番少ない月は9月である。
死亡数は長期的にみれば、2036年には176万人となるから2倍近くにまでなる。
3大死亡原因は1996年に、悪性新生物(がん)が1位で271,183人、2位が脳血管疾患の140,366人、3位は心疾患の138,229人の順である。翌年の97年にはがんの275,413人、心疾患141,74人、脳血管疾患138,697人となり、96年に3位であった心疾患が、97年に第2位となった。アメリカ(1992年)では1位が心疾患、2位ががん、3位が脳血管疾患で、脳血管疾患は1位の約5分の1と割合いが低い。日本も長期的に見れば、心疾患の割合いが高くなるかも知れない。
1994年から2025年の平均寿命の伸びの予測をみると、平均寿命は2000年には男77.19年、女83.94年、2010年には男78.03年、女85.3年、そして2025年には男78.8年、女86.64年に達する見込である。伸びの要因は、3大死因による死亡の改善によるものとしている。これは『厚生の指標』95年4月に掲載されていたデータであるが、がんの特効薬が出来ない限り、この平均寿命は大きく伸びないと考えてもいい。
従業員50人以上の企業で受診した労働者は1,131万人(1994年)。うち健康診断で「異常」とされたのは34.6%。90年は23.6%、92年は32.2%と年々増えている。異常の内訳は血中脂質18.3%。肝機能11.8 %。
1996年の労働災害による死亡者数は、労働省の97年1月22日までのまとめで2,253人となり、最終的には2,300人を超える見通し。95年の2,348人を上回ると、3年連続で増加。業種別では建設業が957人と一番多く、次いで製造業の383人の順である。
孤独死が増えると、監察医が忙しくなる
1993年中に東京23区、大阪市、神戸市で報告された死亡事例によると、東京、大阪、神戸など大都市で自宅死をした人の約4割が、監察医によって死体検案を受けていた。(東京都監察医務院『研究報告書』)調査対象地区の死者は約86,000人で、在宅死亡者は約12,000人。このうち監察医が検案したのは計4,500人で、在宅死亡者に占める割合は東京37.4%、大阪市47.3%、神戸市23.0%であった。死因の7割は病死。その6割が65歳以上の高齢者で、東京では3割、神戸市では5割が独り暮らしだった。
東京都監察医務院が95年に検案した数は9,000体を超え、その7割近くが病死であった。一人暮らしの老人の孤独死が増えると、こうした検案も増える。
1996年1年間の自殺者は全国で23,104人で、前年より659人増えた(警察庁のまとめ)。年齢別では60歳以上の増加が505人(6.5%)と目立ち、40歳代も148人増えた。増加率では会社・団体等の役員や管理職級の公務員ら「管理者」が著しい。
97年における男の30代、女の20代の死亡原因の第1位は自殺である。さてこの自殺の手段は、1位が首つりで男性は64.5%、女性は56.7%。2位が飛び降りで男が9.4%、女が12.2%となる。アメリカでは6割が銃による自殺というから「やっぱり」というべきか。
東京消防庁管内での1993年の火災による死者89人のうち、41.6%にあたる37人が高齢者。負傷者925人のうち高齢者の割合は2割という。高齢者の負傷者が少ないということは、それだけ死亡率が高いと言うことになる。
福岡市消防局がまとめた93年中の救急救助業務の概要によると、救急車利用の4人に1人を高齢者が占め、主に脳内出血、脳梗塞、心臓疾患などによる利用が多いことが明らかになった。同署の救急車の出動件数は93年中の合計は3万825件。
餅で窒息死した人は208人
1996年1月の1ヵ月間にもちをつまらせて死亡した人は、208人で、男性が150人、女性は58人。年齢別では70歳代が28.8%、80歳代が25.4%、60歳代が25.3%の順であった(『厚生の指標』96.12)。従って60〜80歳までで8割を占めることになる。
元気な赤ちやんが突然死んでしまう原因不明の病気である、乳幼児突然死症候群(SIDS)は「それまでの健康状態や病歴からは全く予想できなかった乳幼児が突然死亡する病気で、解剖しても原因が分からないもの」と定義されている。厚生省によると、1995年の国内の死者は579人で、同研究班によると、SIDSは日本では乳児の死亡原因の第2位を占め、年間の死者は約600人と推定されている。(SIDS家族の会:http://www.hi-ho.ne.jp/hotta/sids.html)
外務省は毎年「海外邦人援護統計」を発表している。95年の1年間に日本人が事件や病気で在外公館の保護・援護を受けたケースは12,663件、15,261人、死者は444人。死因は病気が半数近くの208人。次いで自動車事故65人、自殺37人となっている。97年の海外での事件・事故総件数は、12,432件(対前年比1.8%減)で、5年振りに前年比減となった。ただし死亡者数は468人で過去最高。内訳は、疾病が209人と全体の約半数、次いで自動車事故70人、自殺40人である。
在留外国人の死亡数も毎年発表されている。1992年の死亡数は5,222人で、前年より394人(8.2%)増加した。男性は3,327人(全体の63.7%)、女性は1,895人。国籍は「韓国・朝鮮」が最も多く、83.5%を占める。次いで「中国」が7.4%。この2ケ国で9割以上を占めている。死因は、3大死因である「がん」「心疾患」「脳血管疾患」は在留外国人も多く、合計で57.5%である。
97年に日本で死亡した外国籍の死亡者数は5,514人。内訳は韓国4,466人、中国434人、米国108人、タイ64人、フィリピン61人の順。外国人の死亡者数は、日本の景気後退も影響してこの数年増大していない。
死亡率は1年間の人口あたりの死亡者数で計算するが、幼児死亡率の高い国、高齢者が多い国の死亡率が高い。世界の死亡率比較(94年)では、日本は低い順に数えて48位。死亡率の低い国の1位はクゥエート、2位はブルネイ、3位はコスタリカ、マカオと続く。高い順ではカンボジア、ネパール、バングラディシュとなる。
アメリカ合衆国の死亡者数は2,267,093人(93年)。ハワイ州は7,280人。死亡者の多いのはカルフォルニア州の217,000人、一番少ないのがアラスカ州の2,247人。「棺と葬儀用品協会」の調べでは、死亡者で納棺されたケースは86%の1,948,000体という。納棺されない遺体は、たぶん死後すぐに火葬されたものと考えられる。なお96年の死亡者数は231万人と増加傾向にある。
97年版『生保ファクトブック』によると、前年に死亡・満期等により保険金が支払われた件数は586万件。保険金額では9兆6,592億円。うち死亡保険金は170万件で、金額は3兆6,675億円。1件あたりの死亡保険金は216万円。死亡者を年間80万人とすると、1人平均2つ以上の死亡保険をかけていた勘定になる。
戸籍謄本が必要な手続きには、
(1)健康保険から葬祭費または埋葬料をもらうとき、
(2)遺族年金をもらうとき、
(3)郵便局の簡易保険を受け取るとき、
(4)故人の銀行預金や株券の名義変更、
(5)相続税の申告などがある。
また除籍謄本が必要な手続きには、
(1)故人の生命保険を受け取るとき、
(2)不動産を相続するとき
などがあるが、1996年度の戸・除籍謄抄本の交付件数は、3,253万件という。内訳は戸籍謄本が50%、戸籍抄本が33%、除籍謄本が17%である。
総人口に占める65歳以上の人の割合は、1997年度版「高齢社会白書』によると、2015年に25.2%、2050年に32.3%となる。97年10月時点の65歳以上の人は1976万人で、総人口に占める割合は15.7%であるから、15年後には倍以上になる。経済指標の予測値では2015年には、国民の税金と社会保険の負担率は44%になる。
厚生省の1996年『国民生活基礎調査』によると、65歳以上の人のいる世帯数は 1,359万世帯であり、全世帯( 4,381万世帯)の31%を占める。
65歳以上の人のいる世帯の内訳は、「単独世帯」が 236万世帯(17.4%)、「夫婦のみの世帯」が 340万世帯(25%)、「親と未婚の子のみの世帯」が
185万世帯(13.6%)、「3世代世帯」が 432万世帯(31.8%)であり、単独世帯と夫婦のみの世帯の割合が大きくなってきている。介護や葬儀など、あらかじめ準備しておかなければならないのは、単独世帯に属するこの236万人であろう。
1998年10月22日、厚生省が公表した「日本の世帯数の将来推計」によると、2020年には、65歳以上の一人暮らしの世帯が増え、10世帯に3世帯が一人暮らしとなる。一人暮らしの世帯数は6倍の1,453万世帯に達し、全体の3割となる。
人口問題研究所は、西暦2000年から2025年までの都道府県別人口の将来推計を行った(97年)。総人口は2007年をピークに減少に転じるが、65歳以上の老年人口は全都道府県で2020年まで増加する。2015年の老年人口の割合は平均25.2%で、この年に30%を超える都道府県は秋田、島根、山口、高知の4県。これが2025年には14道県にのぼり、最も高い県では33.8%(秋田県)に達する。
日本の100歳以上のお年寄りが1997年に8,491人となり、96年より1,118人増えた。5年前(92年)の4152人に比較すると2倍以上になった。男性が1570人、女性が6921人で、女性の割合が81.5%。長寿日本一は97年4月に113歳を迎えた鹿児島県大隅町の女性。男性は110歳の茨城県の人。人口十万人あたりの百歳以上の高齢者数は全国平均で6.75人で、沖縄が24.55人でトップ。(厚生省の「全国高齢者名簿」)。なお、イギリスでは91年の人口調査で、100歳以上の老人は4,400人だったという。
65歳以上の死亡者の生前の状況やその死亡者の介護者の状況等を調査した「人口動態社会経済面調査」(平成7年)(厚生省)によると、介護をしていた者は、
「世帯員」が66.8%、
「世帯員以外の親族」が 5.5%、
「病院・診療所の職員」が16.4%
となっている。介護をした「世帯員」又は「世帯員以外の親族」の平均年齢は60.4歳であり、これが「妻」では71.4歳、「長男の妻」54.2歳、「長女」54.3歳となっている。
親や配偶者など家族が寝たきりになった場合、どのように介護すべきかについて、「中高年齢層の高齢化問題に関する意識調査」(平成10年)(総務庁)では、40〜59歳の者では、「家族、親族が面倒をみて不足分を福祉施策活用」が47.2%と最も多い。次いで「家族、親族が面倒をみるべき」33.5%の順。一方、60歳以上の者では「家族、親族が面倒をみるべき」が46.2%と大差はない。
東京都内の就業者数は、2000年の910万人をピークに減少し、2010年には881万人で、4人に1人は55歳以上になると、東京都が94年に調査した「就業者の予測」で発表された。それによると2010年には、15〜24歳の就業者が10%、55歳以上が24%となる。これは高齢者の割合が増加してくれば当然といえる。
ゲートボールや旅行など、老人クラブ活動にかかわる事故が増えている。全国老人クラブ連合会が「老人クラブ保険」の保険金支払い状況を調べてわかったもの。保険入会員数は約54万人で、うち保険金が支払われた事故件数は、1993年が3,143件、94年が3,777件。事故は活動場所との往復途上に発生したものが、スポーツ活動中を上回り、93年が1109件(35.3%)94年が1,739件(46%)と急増している。また死亡事故の原因は66%以上が交通事故で、そのうち歩行中の被害が47%と最も高い。
郵政省は老後の資金や年金に対する意識を探る「個人年金に関する市場調査」をまとめた。それによると、老後に必要な最低限の生活費は月額283,000円。一方、公的年金で受け取り可能な予想金額は235,000円であった。この調査は96年11月に30〜59歳の夫婦4,700組の回答をまとめたもの。老後生活に不安を持つ世帯は73.3%。豊かな生活を送るために必要な生活費は月384,000円という。
総務庁の「統計からみたわが国の高齢者」(97年)によると、世帯主が65歳以上で無職の世帯(世帯主の平均年齢71.7歳)の1カ月の平均収入は249,949円、そのうち8割強が年金などの社会保障給付を受けている。貯蓄高では世帯主が65歳以上の世帯で、有業者世帯が2,710万円、無職世帯が2,330万円となる。高齢者世帯の貯蓄高のうち、600万円未満の層が17%程度ある一方、3,000万円以上の高額世帯が有業者世帯で3割を超えている。
東京・名古屋・大阪で、中高年齢者が抱える年金・相続・家庭・健康に関してアドバイスをしているシニア電話相談室は、平成5年から平成9年までの約1,000件の相談内容をまとめた。
1.家族問題(18%)夫婦間のトラブル。
2.年金(17.4%)自分にはどれ位の年金が支給されるのか?自分に年金の受給資格があるか?遺族年金はどれ位支給されるのか?
3.人間関係(11.7%) 隣近所や会社、通っているカルチャーセンターでいわれのない非難や中傷に遭い心を傷めている。
4.健康(7.8%)健康を維持したいと思ったとき。身体に不調を感じたときに強くなる。
5.生きがい(7.0%)定年後の生きがい探し。
6.相続(5.6%)相続の基本的知識や手続きに関する相談。
…などである。
97年5月に総理府が行った『国民生活の意識調査』によると、60〜69歳までの人の悩みや不安のうち、54%が「自分の健康について」、44%が「老後の生活設計」である。同じ質問でも70歳以上になると、80%が「自分の健康について」になり、「老後の生活設計」は逆に30%に減少している。