1998.11
現代葬儀用語(1)

●意思表示カード

 日本では平成9年より臓器移植が可能となった。それにともない日本移植学会では、臓器提供の意思表示カードを配布。意思表示カードには(1)脳死後の臓器提供、(2)心臓死後の臓器提供、(3)臓器を提供しない、の3つのなかから選ぶようになっている。

●異状死

 死亡原因がはっきりしない場合の死を指し、その場合遺体を検案しなければならない。医師にかかっていない者が自宅で亡くなった場合にもこの措置が取られる。平成7年に東京都監察医務院で検案した数は9,000体を超え、その7割近くが病死であったという。一人暮らしの老人の孤独死が増えると、このような検案も増える。監察医制度があるのは東京、横浜、大阪、神戸などの大都市に限られており、その他の地区では本当の死因を突き止められない場合も出てくるという。

●ISO(International Organization for Standardization)

 国際標準化機構。この組織が認定する国際的な品質システム規格には、環境管理システムや品質管理システムがある。日本でも、葬儀式典サービスの流れを、国際的な品質システム規格に向けてマニュアル化した厚木市内の葬儀会社が、日本環境認証機構から認証された。株式会社厚木市民斎場は、葬祭業の経営を国際化時代に対応させるために、サービスのシステム化に取り組み、葬儀の流れを、依頼受付、遺体引取り、納棺、通夜、火葬、初七日法要、費用の精算と順をおってシステム化し、それぞれの場面の手順をマニュアル化した。

●インターカルテ

 国際化にともない、海外旅行などに携帯する英訳のカルテ。海外旅行者も年間1,670万人(96年)に達するなか、海外駐在員や旅行者の急病時に、現地の病院と日本の医師が連携して対応する「国際医療サービス」が注目を集めている。海外旅行保険大手のジェイアイ傷害火災保険は、保険加入者に英訳カルテを発行するサービス「インターカルテ」をはじめた。ジェイアイは世界各地で適当な病院を事前に紹介し、そこでこのカルテを提示すれば、スムーズな治療が可能となる。

●インターネット葬

 インターネットの普及はさまざまな分野で影響を及ぼしている。97年7月8日に朝日大学創立者の合同葬が行われたが、この葬儀では、朝日大学、明海大学の会場をISDN回線で結び、マルチメディアシステムを利用するとともに、インターネットを通して同時中継を行った。

●宇宙葬

 宇宙から地球と愛する人々を見守るという宇宙葬が、1997年4月に行われた。24人の男性の遺灰を乗せた小型ロケットが、西アフリカ沖のスペイン領カナリア諸島上空から宇宙空間に放たれた。1人7グラムの遺灰を納めた小型ロケット「ペガサス」を高度1万1千メートルを飛ぶジェット機から発射。数年間、地球の軌道を回り続け、やがて大気圏に突入して燃え尽きる。世界初の宇宙葬を企画したのは、米ヒューストンにある「セレスティス社」。

●永代供養信託

 「跡継ぎがいない」「海外移住のために先祖供養ができない」「子が供養をするか心配である」といった場合、菩提寺にまとまった布施をして、定期的に法要してもらうことが可能である。しかし寺に一時金を払って後、きちんと供養を続けてくれる心配もある。そんな人のために「永代供養信託」がある。死後の供養を続ける費用を、金銭信託という形で信託銀行と契約すると、銀行ではこのお金を運用して年忌法要に必要な経費を菩提寺に払い込んでくれる制度。

●永代供養墓

 永代供養墓とは、お墓の永代管理・永代供養を寺院や霊園が行うことを条件に販売される墓のこと。1区画ごとに墓石を建てるタイプや、合葬墓タイプなどがある。いずれも寺院が続く限り墓を管理し、お盆や彼岸に供養するなどを定めている。ここ数年、各地に登場しているのは合葬墓タイプ。墓石代がいらないため費用は安いものが多い。首都圏で先祖代々のお墓を建てると、標準的なものでも墓石代だけで70〜150万円はかかる。このため、跡継ぎのいない人や子供たちに、お墓で面倒をかけたくないと考える人たちから注目されている。

●エコ骨つぼ

 環境保護の観点からさまざまな商品開発がなされているが、棺や骨つぼなどの葬儀用品にもあらわれてきた。骨つぼは、陶器製が主流だが、最近、「土にかえる」ように、土壌中のバクテリアによって分解されるたんぱく質などを使ったタイプが登場している。

●エンディングプラン

 「人生の終わりをどのように迎えたらいいのか」を考えることが一つの流れとなっている。自分で自らの終わりを決定する「エンディングプラン」には、葬儀方法、遺言、お墓、散骨などが含まれている。また、自分史の作成、ホスピス、尊厳死、献体や臓器提供、生涯学習といった、さまざまなことを計画することも含まれる。

●エンバーマー

 遺体に防腐処置を施す仕事をする人で資格が必要。防腐処置をすると、1カ月ぐらい自然な姿で遺体を保てるという。アメリカでは葬祭大学でエンバーミング教育を受けるが、日本では現時点ではこの技術を教える学校はない。

●エンバーミング

 遺体の血管に防腐剤や殺菌剤を注入して処置すること。遺体衛生保全などと訳される。ガンなどの闘病でやつれた人の頬をふっくらとさせたり、事故などの傷があると、復元し、化粧を施す。作業には2時間半から3時間かける。現在、エンバーミングは全国9カ所で行われている。97年日本の死亡者約90万体のうち、約1%にあたる約9千体に処置が施されたという。

●ガーデン霊園

 ガーデニングブームにのって、バラの花咲く洋風庭園の霊園が人気を集めている。東都府中市に98年1月にオープンした「府中ふれあいパーク」は、バラと四季折々の草花を植えた霊園である。スペインの宮殿を参考にしたという噴水も中央に配して、これまでの暗いイメージを一掃した。この霊園を考案したのは東京・渋谷にある石材会社のいせや。

●海外邦人援護統計

 外務省が海外に出かけた邦人がどのような事件に巻き込まれたかを示した統計資料。96年の資料によると、1年間に日本人が事件事故や病気などで在外公館の保護、援護を受けたケースは、12,663件、15,261人、死者は444人。地域別では、アジア地域が4,351件で最も多く、次いで欧州地域4,053件、北米地域2,939件の順。死因は病気が半数近くで208人。次いで自動車事故65人、自殺37人の順となっている。

●介護保険制度

 厚生省は2000年4月から介護保険サービスの開始を目指している。介護保険制度は、「虚弱」から「最重度」まで6段階にランク付けされ、費用の1割を支払う。在宅介護では本人負担が月額6,000円〜29,000円。例えば老夫婦が在宅介護が必要と判定されれば、保険から212,000円が支給される。夫婦の負担は月21,000円で、一週間にホームヘルプ7回、デイサービス3回、訪問看護1回のサービスを受けられる。施設介護の場合、特別養護老人ホームは月額2万4,000円となる。

●火葬率

 都市化に伴う墓地不足や公衆衛生の観点から、土葬が難しくなり、現在では遺体処置の98%以上が火葬である。「土葬率」はわずか1%(厚生省生活衛生局)。土葬は多くの場合、「火葬場が造営できない」のが理由である。

●慶弔金

 結婚式や葬儀、出産などに際して贈る金銭。ビジネスマンが97年度の一年間に支払った慶弔金の総額は平均17万7、685円で、前回調査(95年7月〜96年6月)よりも17.7%増加。東海銀行の調査によると、年間の支出回数は平均11.4回で、前回調査(11.3回)とほぼ同じだった。

●献体登録者

 「献体に関する法律」ができたのは1983年。献体をするには、献体登録を必要とする。この際、肉親全員の同意が必要となる。死亡後であれ、一人でも反対があれば、献体はできなくなる。死亡すると、医師に診断書を書いてもらい、火葬許可書を取って、大学に提出する。遺体は解剖実習が行われるまでに防腐剤のホルマリンを注入して保存される。解剖実習は毎年秋から冬にかけて行われる。解剖実習が終了すると、遺体は火葬場で火葬にされ、遺族に渡される。このため、遺族への遺体の返還は2年以上かかる場合がある。また引き取り手のない遺体は、大学内の献体慰霊塔に収蔵される。

●現代仏壇

 現代住宅やマンション生活にマッチした、新しい仏壇ニーズにあわせて開発された仏壇。洋間との調和を考え、インテリア性を高めた新しいスタイルの仏壇・仏具。現代仏壇メーカーでは八木研(本社大阪市)が有名。価格は5万円弱から120万円台まで。

●公営火葬場

 民間団体・LiSSシステム本部が行った調査によると、首都圏で、公営火葬場を持つ自治体は6割。料金は無料から最高9万円まで。東京、神奈川、千葉、埼玉県内の計276自治体で火葬場の有無について調べたところ、火葬場があるのは176自治体(63%)、ないのは92自治体(33%)。「ある」と答えた自治体のうち、単独で設置しているのは40自治体。残る126自治体は、隣接する自治体と共同で設置している。

●香典額

 全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)は、「香典に関するアンケート」ををまとめ97年6月に発表した。それによると、故人が親の場合は全国平均で7万4,653円、兄弟姉妹は4万2,882円、勤務先関係は7025円、友人・その家族は6425円などとなつている。

●合同納骨施設

 合同納骨施設は、横浜市内に4カ所ある市営霊園(計43,000体)が満杯になったことから、市営日野公園墓地の1角に1992年に設けられた。市内唯一の施設で遺骨の収容数は2,000体。利用者が一体当たり6万5,000円を支払うと、記名された骨つぼが施設内の棚に納められる仕組み。市によれば、年間300体程度の募集枠を設定してきたが、生前予約を認めていたこともあり、抽選の平均倍率は93年度が約6倍、94年度が約5倍、95年度が約7倍と高水準で推移している。

●高齢者財産管理センター

 弁護士が高齢者の「財産管理人」となり、財産の管理・保全にあたる組織。東京では第二東京弁護士会が「高齢者財産管理センター」を設立しており、お年寄りの財産を守る弁護士の組織が相次いで誕生している。契約時には本人の意思能力のあることが契約の条件だが、契約後に痴呆になって意思能力を失った場合も契約を継続できるという特約を設けた。利用者の財産の中から月々に必要な生活費を渡すなどの「財産管理」や、預金通帳や印鑑、不動産権利証などの証書を保管する「財産保全」を行う。

●高齢社会白書

 97年度版「高齢社会白書』によると、総人口に占める65歳以上の高齢者の割合が2015年に25.2%、2050年に32.3%に達する。65歳までの雇用の継続、24時間体制の在宅福祉サービスの提供、老人世帯向け公営住宅の提供などの施策を推進していく必要があるという。

●高齢者世帯

 厚生省の平成7年「国民生活基礎調査」によると、平成7年6月現在の全国の高齢者世帯は、561万6千世帯で、20年前に比べ3.5倍に増加する一方、子供(18歳未満で未婚)のいない世帯が全体の67%を占めた。世帯総数は4,077万世帯。平均世帯人員は2.91人。このうち男性65歳以上、女性60歳以上の人だけの世帯か、これに18歳未満の未婚者を加えて構成されている高齢者世帯は、前年よりも0.6%増加して560万世帯を超えた。全世帯に占める割合は13.8%。そのうち「夫婦のみの世帯」は49.3%、「一人暮らし」は46.2%となっている。

●個人墓地

 1948年に成立した「墓地、埋葬に関する法律(墓埋法)」によると、遺体遺骨の埋葬は墓地でしか行えず、墓地を作るには都道府県知事の許可が必要としている。
  自宅に墓地を作ることは法律で認められていないが、そこに骨ではなく、遺髪やつめなど遺骨以外を埋葬することは墓埋法上は問題ないので、許可は不要。その上に記念碑を立てても周辺の住民の許可を取る必要はない。さらに、骨を砕き、庭に散骨することも、墓埋法、刑法では問題にしていない。

●災害時応援協定

 大規模災害時における相互応援に関する協定のこと。隣接都市という地理的条件を生かし、し尿処理施設や火葬場などを互いに提供するほか、災害発生時には自主判断で緊急応援活動ができることなどが規定されている。協定は十条からなり、(1)水や食糧などの生活必需品や資機材の提供(2)被災者の救助、救護のための職員の派遣や物資の提供(3)被災者を1時的に収容する住宅のあっせんと児童・生徒の受け入れ(4)ごみ、し尿処理施設や火葬場の提供(5)ボランティアのあっせんなどがある。

●災害時遺体搬送

 横浜市は97年8月、社団法人・全国霊柩(れいきゅう)自動車協会と災害時の遺体搬送について協定を結んだ。市衛生局によると、市内の災害で死者が出た場合、市が協会に連絡。これを受けて協会は、加盟各社に要請して霊柩車を集め、市内の安置場から火葬場への速やかな遺体搬送などが可能になるという。

●斎場割引制度

 葬儀に対する要望に、「安く安心して利用できる公営の葬儀施設がほしい」というものがある。東大和市は、市営の斎場がないため、市内の民間葬儀業者と提携し、98年4月から市民が民間斎場を2割から4割引で利用できる「斎場利用制度」を始めた。

●再生の森

 散骨用地の名称。遺骨、遺灰を海や山にまく自然葬(散骨)の普及を進めている「葬送の自由をすすめる会」は98年5月、阿蘇・外輪山の一角を、「再生の森」と名付け、自然葬の候補地として準備していることを公表した。同会と所有者が約1万平方メートルの原野を候補地とすることで合意。広葉樹を植え、遺骨を粉末状に砕き、木の根元にまくという。同会の「再生の森」は北海道や東京などの山ろくに計7カ所あり、阿蘇・外輪山で8カ所目。

●散骨請負約款

 散骨を実施するにあたっての契約内容を記したもの。記入内容は、散骨の趣旨、申込条件、添付書類、散骨の時期、散骨場所、式次第、料金を記入などがある。

●散骨船

 河や海で散骨するための船。上海では客船で出発し、親族の遺灰を長江(揚子江)河口にまく。上海市民政局によると、91年から散骨を認め、96年まで春と秋計17回にわたって計2,300人分の遺灰が海にまかれた。

●死後の手続き代行

 自治体にどんなサービスを望んでいるかを尋ねた「ニッポン人のお葬式観」によると、最も多いのが「自治体による格安な葬儀会館の設置」(73.9%)、続いて自治体による死後の手続き代行」(70.1%)を望む人が多かった。独居老入や夫婦のみの高齢世帯が増加するにつれ、葬儀や死後の手続きをしてくれる人がいないという事態は多くなっていくと考えられる。このサービスを希望している多くは、女性や中高年層で、自治体などに生前預託しておき、死後の手続きを代行してもらうというサービスは、これから必要になってくるだろう。

●死体検案

 死因不明の急死や事故死、病死でも医師の診断を継続的に受けずに突然死亡した場合には監察医の検案対象となる。東京や大阪、神戸など大都市において、自宅で死を迎えた人の約4割が、監察医によって死体検案を受けていたことが、東京都監察医務院の96年にまとめた「研究報告書」で分かった。調査対象地区の死者は約86,000人で、在宅死亡者は約12,000人。このうち監察医が検案したのは計4,500人で、うち在宅死亡者に占める割合は東京37.4%、大阪市47.3%、神戸市23.0%に上った。死因の7割は病死。そのうち6割が65歳以上の高齢者で、東京では3割、神戸市では5割が独り暮らしだった。

●自動墓参システム

 都市部においては、納骨堂の重要性が高まり、開発にあたってはハイテク技術も導入されている。祭壇の前にある装置に、バーコード付きカードを差し込むと、祭壇背面の納骨棚から、上下左右、前後に動くトレーが、お骨を正面の参拝場所まで運んでくる。こうしたハイテク倉庫の技術を応用し、目的のお骨を選び出してくる「自動墓参システム」が登場し、地価が高い首都圏や省スペースが求められるところで導入が進んでいる。初導入は97年東京都北区の寺院である。

●死亡者予測

 高齢者人口が著しく増加している。その人口は平成8年(1996)には1,902万人であるが、17年(2015)には2,500万人を超え、27年(2025)には3,188万人を超えるものと見込まれている。また、これに伴い、死亡者数が増加し始める。平成9年1月の推計によると、平成12年(2000)には100万人超える。26年(2014)には死亡者数が140万人を超えるものと推計されている。さらに48年(2036)には176万人と最高となり、それ以後は減少に転ずる。

●ジミ葬

 葬儀市場は死亡者の増加により、成長産業と目されていたが、ジミ葬が一般化し、葬儀料金は低落、葬儀件数は増加しているが、売上高が低迷しているのが実情である。しかしそうした「ジミ葬」においても寺院の費用(お経料と戒名料)だけは値下がりしていないようである。

●市民葬

 市民葬には、市職員が市民の葬儀を手伝う「直営方式」と、祭壇など葬儀用具を貸し出す「貸与方式」がある。民間業者側には市からの補助金などはないが、メリットは「行政と提携することで信頼性が増す」「宣伝効果がある」という。売り物である価格や割引率は「市価に比べ2、3割り安い」。一方で「民間業者との話し合いで値段を決めてもらっている」と、安くなるかどうか明確でない市もあった。

●宗教ばなれ

 「読売新聞」が98年5月に発表した調査では、宗教を「信じている」と答えた人は21%で、79年調査(34%)から13ポイント減少、「信じていない」が78%と8割を占めた。「信じている」の数値の推移を見ると、20歳代は89年から10%前後で低い状態が続いており、若者達の間では新宗教への関心が高いといわれる割に、宗教離れの定着がうかがえる。これに対し、高齢になるほど「信じている」が多いのは例年の傾向だが、50歳代以上では89年から「オウム」をはさんだ95年までの減少幅が大きい。特に、60歳以上では、この間に18ポイントもダウンしている。

●心的外傷後ストレス障害

 交通事故や天災などの被害を受け、そのときの体験が心の傷として残り、その程度がひどいと不眠などのさまざまな影響をおよぼす。神戸震災から2年以上が経過しても、被災者の心に、深い傷が残されており、96年の1年間に診察を受けた初診患者が計196人にのぼった。このうち、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されたのは約2割。

●生前戒名

 戒名は本来、仏教に帰依した人が生前に受けるものである。それが江戸時代以降、社会風習として一般の人も、葬儀の際に僧から受けられるようになった。東京都の調査(96年)では戒名料は平均40万円と高い。こうした中、戒名本来の姿を取り戻そうと、生きている間に準備をしている団体がある。「生前戒名の会」(東京)で、仏教の戒めを守る誓いをすることで、比較的低料金で、提携の寺から生前に戒名を授けてもらえる。

●生前葬儀契約

 葬儀について本人が生前に契約を結ぶこと。葬儀の生前契約は米国で開始され、欧米で広く行われているもので、「プレニード」と呼ばれる。米国では葬儀社の90%がこのシステムを扱っている。生前契約は、葬儀の内容を取り決め、葬儀の費用の支払い方法を定める。米国で生前契約が普及した理由には、1.香典という習慣がなく、葬儀費用は全て遺族の負担となる。2.遺族に経済的負担をかけたくないとする人々が増えた。3.葬儀に自分の考えを生かしたいとする人々が増えたことがあげられる。1方、日本でも、米国と同様に「子供に頼れない」「子供に迷惑をかけたくない」「死後にも自分の意思を反映させたい」と考える人々が増え、生前契約システムが注目を集めている。
  日本では1993年秋にリス(LiSS)システムが登場したのが最初。95年4月に東京海上の関連会社と全国の主要葬儀社が設立した「日本FAN倶楽部」が始めた。FAN倶楽部入会には、入会金1万円を払って葬儀内容を予約、訃報の連絡先は50人まで登録出来る。葬儀予約代金は、一括支払いか、保険加入による積み立てから選択する。サービスの中心は、生きているうちに音楽葬やオリジナル葬など自分の望む葬儀を予約する葬儀の生前予約サービス、訃報通知が必要な人をあらかじめ登録し、亡くなったときに電話で連絡する訃報連絡サービスの二つ。さらに、傷害や生命保険を組み合わせた総合サービスも提供する。

●生前葬儀設計

 生きているうちに自分の葬儀のプランを立てること。「自分の人生の幕引きは自分でする」という人が増えてきたので、本人があらかじめ個人や組織に自分の意思を託すことになる。アメリカにあるLIMRA(生命保険市場調査協会97年調査)によると、調査対象の30%の人が生前設計(プレプラン)、あるいは生前契約(プレファンド)に関心があると答えている。ユナイテッドファミリーの調査では、65歳以上の人の72%が遺言に葬儀プランを書き添えており、58%が霊園の区画を用意しており、55%が葬儀代金を準備し、29%が葬儀の生前設計を行っており、5%が生前契約(プレファンド)をしているという。また75歳以上になると、84%がすでに葬儀場を決めており、70%が霊園区画を用意しているという。

 

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