1993.10 |
人が死亡すると,遺族は死亡手続き、葬儀、名義変更等、さまざまな問題に直面する。
このように、人の死亡は本人だけでなく、遺族や親族に対し重大な影響を与える。人が死亡した場合は、死亡届を出さなければならないか、場合によっては死亡届をすることができないこともある。船の沈没、外国登山での遭難、その他の災害によって遺体が発見出来なかった場合、又は遺体があっても身元が特定できなかった場合には、官公署等に属する者が死亡報告を行なう制度が設けられている(戸籍法(以降"戸"と表記)89条292条)。
今回のテーマは死亡届や失踪宣告届等について、法律に即して取り扱った。
死者が出たり、発見したりした場合に、所定の官庁へ死亡届を行うが、これに関係する条文には次のようなものがある。
1 届書の様式(戸28条、戸規59条)
2 届出の期間(戸86条1項)
死亡届は、届出義務者が死亡の事実を知った日から7日以内(国外での 死亡は、その事実を知った日から3か月以内)にしなければならない。また、届出期間を経過した後の届出であっても、役所はそれを受理しなければならない(戸46条)。
3 届書の記載事項(戸29条、86条2項、戸規58条)
4 添付書類(戸86条2項、3項)
5 届出地(戸25条、88条)
死亡届は、死亡地でこれをすることができる。
また、死亡地が明らかでないときは死体が最初に発見された地で、汽車その他の交通機関の中で死亡があったときは死体をその交通機関から 降ろした地で、航海日誌を備えない船舶の中で死亡があったときはその船舶が最初に入港した地で、死亡の 届出をすることができる。
6 届出義務者(戸87条1項)
死亡の届出は、同居の親族以外の親族もすることができる(戸87条2項)。この同居していない親族は、届出義務者ではなく届出の資格を有するのである。
死亡届に記入する事項は、次のとおりである。
(1)〜(3) 「氏名、生年月日」欄
この欄には、死亡者の氏名、性別、生年月日を記入する。
(4) 「死亡したとき」欄
この欄には、死亡した日時を記入する。死亡時刻は、昼の12時は「午後0時」、夜の12時は翌日の「午前0時」と記入する。
(5) 「死亡したところ」欄
この欄には、死亡した場所を地番号まで記入する。
(6) 「住所」欄
この欄には、死亡者の死亡当時における住所と所属していた世帯の世帯主の氏名を記入する。
(7) 「本籍」欄
この欄には、死亡者の死亡当時における本籍と筆頭者の氏名を記入する。外国人の場合には、その者の国籍を記入する。
(8)(9) 「死亡した人の夫または妻」欄
この欄には、死亡者の配偶者の有無と年令を記入する。配偶者かいない場合には、未婚、死別、離別の区分に従い、該当の□に印をする。なお、この場合の配偶者とは、法律上の婚姻関係にあった者を指し、内縁関係の配偶者は含まれない。
(10) 「死亡した人の出生届」欄
この欄には、生まれてから八日以内に死亡したとき、死亡者の出生届が提出された月日と提出先の市役所又は町村役場の名称を記入する。
(11)(12) 「死亡したときの世帯のおもな仕事と職業、産業」欄
この欄には、死亡者が死亡当時に属していた世帯の主な仕事について、該 当する□に印をする。
「その他」欄
この欄は何の説明もないが、一般的に次のような事柄を記入する。
(ア)届出期間を過ぎて提出した場合の遅延事由。
(イ)死亡診断書等の添付が出来ない場合は、その事由(戸86条3項)
(ウ)死亡者と同籍する子があり、その子の父(母)欄に「亡」の字を冠記したい場合には、その旨の申出事項。
(エ)その他、戸籍の記載に必要な事項で、該当する欄に記載することができない事項
「届出人」欄
死亡届の届出者として7つの項目から該当するものをチェックする。
(1) 同居の親族
(2) 同居していない親族
(3) 同居者
(4) 家主
(5) 地主
(6) 家屋管理人
(7) その他
届出人の「住所」及び「本籍(筆頭者の氏名を含む)」を記入し、届出人が署名押印して届出を行う。
また公設所における死亡者については、届出者かないときは、当該公設所の長又は管理人が届出義務を負う(戸93条、56条)。
航海中の船舶で死亡した者がある場合は、船長から航海日誌の謄本が堤出される(戸93条、55条)。
このほか、水難、火災その他の事変等で死亡した者があるときは、その取調べをした官庁・公署が、本籍不明者又は認識不能者が死亡したときは、警察官は、検視調書を作り、これを添付してそれぞれ死亡の報告がなされる(戸89条、90条、92条1項)。
死亡届には、死亡診断書又は死体検案書を添付する。
診断書又は検案書が得られないときは、死亡の事実を証明する書面を添付し、診断書を得ることが出来ない事由を記入する。(戸86条3項)。
医師法施行規則第20条 医師は、その交付する死亡診断書又は死亡検案書に、左の事項を記載し、記名押印又は署名しなければならない。 1 死亡者の氏名、年令及び性別 |
ブラジルのサンパウロ州スザノ市に在住していた日本人(未婚者)の死亡届が、届出義務又は届出資格を有しない在スザノ市の福両県人会長から、死亡者の本籍地の区長にされた事例がある。(資料=「戸籍研修」法務省民事局編)このように、届出義務又は届出資格を有しない者から死亡の届出がなされた場合、本籍地の市町村長は監督法務局又は地方法務局の長の許可を得て、戸籍に死亡の記載をすることになる。
添付の死亡証明書など死亡を証する書面と、届書の記載とによって当該届出の死亡を確認できるときには、市町村長は、監督局の長の許可を得て、事件本人の戸籍に死亡の記載をすることができる。
医師の治療をうけている患者が、その病気で死亡すると、医師は「死亡診断書」を作成し遺族に交付する。そして遺族は死亡診断書とともに「死亡届」を役場に提出すると、埋火葬の許可がおり、死亡した人の戸籍が抹消される。
しかし医師が異状死体、つまり「外因死および病死でも死囚の明らかでない遺体」を検案した場合、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。
(1) 病気以外で死亡した者について、その者の親族でない「その他の同居者」が届出をする場合、変死として検視を受けなければならない。 「変死者」とは、病死及び自然死以外の外因死などによる死亡者のことである。
(2) 死亡した時刻については推定されたものである。医師の死体検案の結果、推定された時刻を届書に記載するときは、「推定午前(午後)何時何分」と記載する。
死因等の不明な異状死体の届出があると、警察官は死亡の状況や死因について捜査する。係官が行う遺体の検査を「行政検視」という。異状死体のうち、とくに犯罪と関連性やその疑いがある遺体を「変死体」という。変死体は検察官に報告され、検察官または司法警察員による「司法検視」が行われる。
検視の一補助行為として、医師が遺体を検案することを「検屍(検死)」という。検案した医師は「死体検案書」を発行し、それにより遺族は死亡届の手続きを行う。検視の結果、必要があれば法医解剖(司法解剖または行政解剖)が行われることになる。
(1) 人が死亡した場合、死亡の種類が病死および自然死の内因死と自殺・他殺・災害などの外因死とでは、法律上の扱いが異なっている。急病死者も、死因が不明であったり、外因死と紛らわしい場合には、一応変死者として扱い、法医学的検査(検案、解剖)の対象となる。
(2) 初診時にすでに死亡していた患者は、変死扱いとなる急病死者の代表的な例である。死亡を確認したら直ちに(24時間以内)に警察暑に届ける。
(3) 24時間以前に診療した患者の死
「医師が診療中の患者が、24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、自ら診察しないで交付することができる」(医師法第20条但し書き)と規定している。
わが国の平成3年における死産は4,376人。死産比率は昭和32年をピークに、低下傾向を示している。
死産とは妊娠第4月以後における死児の出産をいい、死児とは出産後において心臓膊動、随意筋の運動及び呼吸のいずれをも認めないものをいう。(第2条) また第3条に、「すべての死産は、この規程の定めるところにより、届出なければならない。」とある。
第4条 死産の届出は、医師又は助産婦の死産証書又は死胎検案書を添えて、死産後7日以内に届出人の所在地又は死産があった場所の市町村長に届出なければならない。
(2) 汽車その他の交通機関(船舶を除く)の中で死産があったときは母がその交通機関から降りた地の、航海日誌のない船舶の中で死産があったときはその船舶が最初に入港した地の市町村長に死産の届出 をすることができる。
(3) 航海日誌のある船中で死産があったときは、死産の届け出を船長になさなければならない。船長は、これらの事項を航海日誌に記載して署名捺印しなければならない。
(4) 船長は、前項の手続をなした後故初に入港した港において、速かに死産に関する航海日誌の謄本を入港地の市町村長に送付しなければならない。
第5条 死産届は、書面によってこれをなさなければならない。
(2) 死産届書には、次の事項を記載し、届出人がこれに記名捺印しなければならない。
1 父母の氏名2 父母の婚姻の届出直前(婚姻の届出をしていないときは、その死産当時)の本籍。もし、日本の国籍を有しないときは、その国籍
3 死産児の男女の別及び嫡出子又は嫡出でない子の別
4 死産の年月日時分及び場所
第6条 死産証書又は死胎検案書には、次の事項を記載し、又は助産婦がこれに記名捺印しなければならない。
1 死産児の男女別及び母の氏名
2 死産の年月日時分
3 その他厚生省令で定める事項
第7条 死産の届出は、父がこれをなさなければならない。やむを得ない事由のため父が届出をすることができないときは、母がこれをなさなければならない。
その他
1 同居人
2 死産に立ち会った医師
3 死産に立ち会った助産婦
4 その他の立会者
人の生死が何らかの原因によって、永年にわたって不明であるときは、その人の財産又は身分上の関係が宙に浮いた状態におかれることになる。例えば、出漁に出たまま、長年も音信不通で、しかも遭難したという事実も確認できず、その生死が永年にわたって不明であるときは、その人の財産は売買したり名義変更をしたりすることができない。また、その人の妻は、そのままでは再婚できない状態におかれる。そこで、このような財産上又は身分上の不都合な関係を解消する、「失踪宣告」の制度がある。
財産上又は身分上、失踪した人と利害関係を有する人は、家庭裁判所に請求して、次の要件を満たすことが認められる場合には、失踪宣告をし(民30条)、その生死不明者を死亡したものとみなすことにしている。
1 不在者の生死が明らかでないこと。
死亡が証明されない生死不明者、例えば、海難により行方不明となり、たとえ死体が発見されない場合でも、四囲の事情により、死亡の認定をして、取調官庁から死亡の報告がなされることがある。(戸籍法89条)
2 生死不明の状態が一定期間継続すること。
7年間継続して生死が不明であること(普通失踪)。あるいは戦地に臨んだ者、沈没した船舶に乗っていた者、その他死亡の原因となるような危難に遭遇した者の場合には、戦争が止み、船舶が沈没し又は危難が去った後、1年間その生死が不明であること(危難失踪)。
3 利害関係人からの請求があること。
生死不明者との間に財産上又は身分上の利書関係を有する者からの請求があること。
4 6か月以上(普通失踪の場合)又は2か月以上(危難失踪の場合)の公示催告をすること。 以上の要件がみたされると家庭裁判所は失踪宣告の審判をし、それが確定すると、宣告を受けた生死不明者は死亡したものとみなされるのである。その死亡とみなされる年月日は、普通失踪の場合は、7年の失踪期間満了の時であり、危難失踪の場合は、その危難の去った時である(民31条)。
なお、失踪宣告によって死亡したものとみなされた者でも、その後生存が確認される場合もあり、また、死亡したものとみなされた時期と異なった時に死亡していたという場合もある。このような場合には、家庭裁判所は、本人又は利害関係人からの請求によって、先にした「失踪宣告」を取り消すことになる(民3条)。
仮に配偶者(夫)が、その住所を去ってから7年以上にわたり、その生死が不明であるため、留守を守っていた妻から、失踪宣告の審判の申立てがあった場合、家庭裁判所で失踪宣告の審判が行なわれ、それが確定したのち、申立人である妻から失踪宣告の届出が行なわれる事になる。
(1) 「失踪した人の氏名」欄
この欄には、失踪した人の氏名及び生年月日を記入する。
(2) 「最後の住所」欄
この欄には、失踪した人が行方不明となる直前の住所、及び世帯主の氏名を記入する。
(3) 「本籍」欄
この欄には、失踪した人の本籍、及び筆頭者の氏名を記入する。
(4) 「死亡とみなされる年月日」欄
この欄には、失踪宣告の結果、死亡とみなされる年月日を記入する。「普通失踪」の場合には、「行方不明となった年月日」を基礎に、その翌日から起算して、法定の7年の期間満了の年月日を記入する。なお、失踪者が行方不明となった月又は日が確定されていないときは、その年又は月から起算して、それに当たる年又は月の最終日が期間満了の日として扱われている。危難失踪の場合は、戦争の止んだ年月日、船舶の沈没した年月日、その他危難の去った年月日(民31条)を記入する。
(5) 「審判確定の年月日」欄
この欄には、失踪宣告の審判又は失踪宣告取消しの審判が確定した年月日を記入する。
(6) 「その他」欄
この欄には、おおむね次の事項を記入する。
ア 従軍中の生死不明による失踪宣告については、従軍中における失踪宣告である旨。
イ 失踪者と同籍する子がある場合に、その子の父母欄に「亡」の字を冠記したいときはその旨の申出事項。
ウ 失踪宣告取消届の場合にはその旨。
エ その他、戸籍の記入などに必要な事項で、該当する欄に記入できない事項。
(7) 「届出人」欄
この欄には、届出人の資格、住所及び戸籍の表示を記入し、届出人が署名押印する。届出人の資格については、該当する□に印をする。
添付書類=失踪宣告の審判書、又は失踪宣告取消しの審判書の謄本及びその確定証明書を添付する。
この規定は、死亡報告のため、海上保安庁が取り調べた船舶の遭難、投身、転落その他海上における事故による行方不明者の死亡認定に関する事務を適切に処理するため、必要な取扱要領を定めることを目的としている。
第2条(死亡認定事務の重要性)
死亡認定事務は、行方不明者の身分関係及び財産関係を確定する重要なものであるから、その処理に当っては、正確且つ慎重な調査を行い、行方不明者に関する事実の確認に努めなければならない。
第3条(書類作成上の注意事項)
この規程に定める書類の作成に当り、文字を加え、削り、又は欄外に記人したときは、作成者がこれに認印し、その字数を記入しなければならない。但し、削った部分はこれを読むことができるように字体を残さなければならない。
第4条(死亡認定の要件)
死亡認定は、左の各号の要件を具備する場合に限り行うことができる。
1 海上保安庁が取り調べた行方不明者であること。
2 行方不明者の親族(婚姻の届出をしないが、事実上配偶関係にある者を含む。)から死亡認定の願出があったこと。
3 行方不明者の被服又は携帯品、避難船舶、遭難船舶の破片、ぎ装品又は属具等の現存、海難の現認者の証言等行方不明者の死亡を確認するに足りる証拠がある場合か、又は行方不明者の乗船していた船舶が遭難したことが確実である場合であって、四囲の状況をも考慮するとき、その行方不明者が生存しているとは考えられないものであること(単に消息を絶ち、生死が分明でないというだけではたりない)。
4 海難発生の時から3月以上を経過したものであること。
第5条(死亡認定を行う者)
(1) 死亡認定は、第2項に掲げるものを除き、行方不明の原因となった海難の発生地を管轄する管区海上保安本部長が行う。 (以下略)
(2) 戦時災害である海難により行方不明となった応徴船員、及び徴よう船乗客についての死亡認定は、海上保安庁長官が行う。
第6条(死亡認定願) 死亡認定の頤出は、左の手続により行わせるものとする。
1 行方不明者の親族から、当該行方不明者の乗船していた船舶の所有者に対して、死亡認定手続願を提出させる。
*(なお引用した法令条文は、一部表記等変更してあります。)